5月1日、部落差別にもとづくえん罪・狭山事件は、事件発生・石川一雄さん不当逮捕から56年が経過した。確定判決をつき崩す新証拠が続々と出され、石川さんの無実は明白となっている。半世紀を超え無実を叫び続ける石川さんの思いに応え、今度こそ、今年こそ狭山事件の再審に決着をつけよう。
確定判決の主軸は完全に崩壊
狭山弁護団は、第三次再審請求段階において確定判決を突き崩す221点もの新証拠を裁判所に提出している。
再審審理における最重要の争点は、犯人が残した唯一の物証である脅迫状とその筆跡、そして石川さん宅から発見された被害者のものとされる万年筆である。
部落差別による貧しさから学校に行けなかった石川さんには、事件当時、文字を書いたり文章を作ったりする能力はなかった。逮捕当日に石川さんが書いた「上申書」と脅迫状の筆跡・文面を見れば一目瞭然である。取調べテープの筆記場面からも当時の石川さんの読み書き能力では脅迫状は絶対に書けないということを確信する。さらに、犯行を計画し封筒に入れて持ち歩いていたとされる脅迫状には石川さんの指紋はひとつもない。封筒にもない。筆跡、書字・国語能力、脅迫状・封筒の状況から、石川さんは脅迫状を書いておらず、犯人でないことは誰が見ても明らかだ。
昨年1月に提出された福江鑑定は、石川さんの筆跡と脅迫状の筆跡は同一人ではないことをコンピューターによる最新技術を駆使して客観的・科学的に明らかにし、「99・9%の確率で別人が書いたもの」と結論づけた。2016年8月に出された下山第1鑑定は、発見万年筆には、もともと被害者が使っていたインクが入っていなかった事実を実証し、被害者のものではない、偽物であることを証明した。2017年1月の川窪鑑定では、石川さんが被害者から奪った万年筆で訂正したとされる脅迫状の訂正箇所は、被害者が事件直前まで使っていた万年筆のペン先とは異なることを証明し、確定判決の認定を根本から崩した。昨年8月に出された下山第2鑑定は、インクに含まれる元素の違いから、発見万年筆が被害者のものではないということを100%証明し、当初から多くの疑惑が持たれていた発見万年筆は、警察による証拠のねつ造であることまで明らかにした。
事実調べなくして再審開始なし
有罪判決を構成する重要証拠に合理的な疑いが次々と生じ、捜査の不正、証拠のねつ造までもが明らかになっている今、東京高裁第4刑事部・後藤眞理子裁判長は、早急に事実調べを行い、再審制度の理念、刑事裁判の鉄則にもとづき再審を開始しなければならない。
80歳になった石川さんは、再審開始を求めて「一刻も早く事実調べを行ってほしい」と訴え続けている。事実調べさえ行われれば、石川さんの無実は明々白々となる。事実調べが行われずして、再審開始決定が出された例はない。当面する最重要課題は、早急に事実調べを実施させることである。
東京における狭山再審の闘いは、狭山東京実行委員会を軸に粘り強い取り組みが展開されてきた。特に、狭山50年を契機に2013年から取り組まれている担当裁判長に対する要請ハガキ運動では、事実調べ・再審開始を求める6000を超える都民の声が裁判長に届けられている。再審の門を開くには世論の拡大が何よりも必要である。近々に予定されている「狭山意見広告」などの機を捉え、署名や要請ハガキ運動を広範に展開し、一刻も早く証人・鑑定人尋問などの事実調べを行わせ、絶対に再審開始決定を勝ち取ろう。来たる5月23日に日比谷野外音楽堂で開催される「狭山事件の再審を求める市民集会」に各地域・職場からの声を集中しよう。一人でも多くの仲間が参加されることを呼びかける。