主張

差別の現実を踏まえた効果的な事業執行を
都議会で2020年度予算が成立



 今年3月の都議会で2020年度東京都予算が成立した。部落差別撤廃と人権確立に向けた事業予算は、前年度比約1億7000万増となった。特に、「皮革技術センター運営整備予算」と「人権プラザの運営」が増額している。

 事業内容は「普及啓発」「教育」「産業・労働」「その他」となっており、昨年度と大きく変わっていない。「普及啓発」では、相談事業、テレビ・ラジオ・広報東京都による啓発事業、啓発冊子の作成、青少年や社会福祉事業従事者に対する研修事業など、「教育」は人権尊重教育推進校、啓発学習資料や教材ビデオ制作などの事業が組まれている。「産業・労働」では、「一般向け訓練」「商工会等経営指導員」「皮革鞣製業経営安定対策」「皮革技術センター運営整備」「就職差別解消促進月間」など。「その他」の分野では、「人権プラザの運営」「東京都人権啓発センター運営費補助」「ヒューマンライツ・フェスタ東京の開催」などが事業化されている。

 東京都は、同和問題解決のための取組に関する基本方針(2002年)、東京都人権施策推進指針・改訂版(2015年)、東京都人権尊重条例(2018年)、部落差別解消推進法(2016年)に基づき同和問題の解決に取り組んでいくと基本的考え方を示し、差別撤廃に向けた都の責務を明らかにしている。

効果的な事業執行を

 差別意識や差別事件の現実、被差別部落の産業や生活実態を踏まえて、より効果的な事業執行が求められている。都内住民による差別発言や差別落書きが後を絶たない中、部落問題啓発においては都内のすべての人に届く効果的な手法が求められている。

 また、鳥取ループ・示現舎の「全国部落調査」復刻版や「部落探訪」は丸4年以上野放しになっている中、インターネット上の差別の撤廃に向けた事業の確立は急務である。さらに、皮革関連産業は、TPPやFTAの締結による国際競争の激化、豚コレラによる販売減少など存続が左右される事態となっており、中小企業、地場産業に対する手厚い対策が必要とされている。さらにまた、格差・貧困化の中で高齢者対策、雇用対策などが重点的に講じられなければならない。新型コロナウイルスによる社会不安の増大が、差別や人権侵害に転化されている現実がある中、差別撤廃、人権確立に向けた事業は強化されなければならない。

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