主張

命の保障・人権政策の強化・生活の安定化にむけ
行政闘争を強化しよう



 都連は、「2022年度部落解放事業要求書」を9月中に東京都に提出する予定である。

命の保障を

 現在、新型コロナウイルス感染症の拡大は医療崩壊寸前の事態を招き入院できない「自宅療養者」が8月16日時点で2万人(都内)を超え急増している。そして、感染症対策は自己責任に委ねられ、まさに命の放置という事態に陥っている。命の放置や選別は最大の人権侵害である。命を救う早急な対策の確立が必要である。その上で、部落差別の撤廃に向け、以下の3点が重点的な要求事項である。

 

あらゆる差別の禁止を明確に

 第1は、「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」(「東京都人権尊重条例」)の改正である。東京都はオリンピック・パラリンピック開催を契機に、2019年4月、「東京都人権尊重条例」を完全施行した。しかし、差別や人権侵害は強まりつつある。都内の差別の現実と国際人権基準を踏まえ、あらゆる差別を禁止した総合的な差別禁止・人権尊重条例に改正すべきだ。それこそいかなる種類の差別も許されないとしたオリンピック憲章を次代の東京に活かす方向性だ。

ネット上の差別情報に対する対策の確立

 第2に、ネット上の差別に対する都としての対策の確立だ。コロナ禍でインターネット上の誹謗・中傷が社会問題化しているが、国は効果的な対策を打ち出せていない。インターネットが社会的インフラになろうとしているにもかかわらず、ネット上の差別や人権侵害の多くは野放しになっている。東京都はネット上の差別や人権侵害に対して、国に対策を要望したり、通報があったケースのみ東京法務局に削除依頼しているが、東京都が主体的にネット上の差別や人権侵害の把握(実態調査)をしたり、プロバイダーに削除を働きかけたりすることはしない。その間、差別情報は拡散し続けており被害者は泣き寝入りを余儀なくされ苦しんでいる。この当事者の現実を踏まえ、東京都としての責務を果たすべきである。

中小企業や労働者に対する大胆な生活安定化対策

 第3に、格差・貧困からの脱却である。コロナ禍での外出自粛要請や時短・休業要請は、都内の中小企業の経営に大きなダメージを与えている。国や都は持続化給付や一時支援を制度化したが到底企業経営の維持に追い付いていない。廃業や倒産、また、解雇や雇止めなどが増加し格差・貧困化は一層深刻になっている。被差別部落の伝統的地場産業として発展してきた皮革・履物産業も同様である。中小企業や労働者に対する大胆な生活安定化対策が必要である。

 私たちは以上の3点を要求の柱としながら、差別の現実と部落の状況を踏まえ、「解放行政の確立」「普及啓発と人権対策」「学校教育」「社会教育」「保育」「青年・女性対策」「企業対策」「労働対策」「環境改善と生活向上」「芝浦と場対策」の10分野において要求事項をまとめた。

 ウィズコロナとか、ポストコロナとかいわれるが、命の保障・人権政策の強化・生活の安定化が重要である。東京都は、当事者との綿密な連携のもと効果的な政策の確立と予算執行が必要である。「部落差別解消推進法」が成立して5年を迎える中、要求実現に向け、東京都に対する行政闘争を強化していこう。

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