主張

「法」を活用し 解放行政を確立させよう



法の制定

 昨年、2016年12月、「部落差別撤解消推進法」が成立、施行した。この「部落差別解消推進法」の意義は、第1に、改めて部落差別の存在を確認し、特にインターネット上の差別を重視していること。第2に、部落差別は許されないものであり解消すべき重要課題とし、罰則規定はないが部落差別を禁止したこと。第3に、時限立法ではなく、部落差別の完全撤廃を目的にしたこと。第4に、部落差別撤廃に向け国と地方公共団体の責務を改めて明確にしたこと。第5に、「相談体制の充実」「教育・啓発」「実態に係る調査の実施」を定めたこと等である。

差別の現実

 この「部落差別解消推進法」が成立した背景には、「特措法」終了(2002年)以降も部落差別はなくならず、寧ろ悪化している現実がある。結婚や就職の際の差別身元調査につながる戸籍謄本等不正取得事件や物件を取得する場所が部落かどうかを調査したり問い合わせする土地差別調査事件は後を絶たない。差別落書や差別投書なども増加の傾向にある。さらに、「被差別部落の所在地リスト」をネットなどで公表し差別身元調査を誘発、煽動する「全国部落調査」復刻版事件は今も続いている。こうした部落差別の現実があること、そして現状の対策では不十分であるからこそ、「部落差別解消推進法」の制定が求められた。この背景を押さえておくことは重要である。

都の人権政策

 東京都は、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会が決定(2013年)して以降、「東京都人権施策推進指針」を改訂(2015年)し、また東京都人権プラザの移転に着手した(2017年2月一部を港区芝に移転)。東京都人権プラザは部落問題解決に向けた拠点施設としてその役割を果たしてきた。「地域」から「港区芝」への「人権プラザ」の移転は、「同和行政」の縮小、あるいは撤退を意味している。「部落差別解消推進法」制定の背景(差別の現実)と積極面を踏まえ、新たな段階として「部落差別の完全撤廃に向けた政策(「解放行政」)の確立が求められている。

 なお、小池都知事は、2016年12月に「都民ファーストでつくる新しい東京」を発表し4年間の「実行プラン」を示した。人権政策にかかわっては、多文化共生社会を実現するとしている。多文化共生社会の実現のためには、在日コリアン、アイヌ民族、被差別部落出身者、障がい者、セクシュアル・マイノリティなど個別人権課題ごとに差別を撤廃する政策を強力に推進していく必要があることはいうまでもない。

要求書の提出と重点要求

 部落差別の現実と「部落差別解消推進法」の制定を踏まえ、都連は、9月28日、「2018年度部落解放事業要求書」を東京都に提出した。「重点要求課題」は、第1に、差別の現実と「部落差別解消推進法」を踏まえ「部落差別の完全撤廃に向けた基本方針」を確立すること。第2に、同様の理由で東京都人権プラザの移転にかかわって、現地域に部落問題を解決する拠点施設を整備すること。第3に、「相談体制」「教育・啓発・研修」を量・質ともに拡充すること。また、「総合的実態調査」を実施すること。第4に、当事者自らの取り組みへの支援と連携にむけた対策を確立すること。第5に、格差・貧困社会のもとで部落の生活も悪化しており皮革関連産業をはじめとした中小零細企業対策、貧困対策などを拡充すること等である。

 「部落差別解消推進法」を踏まえた「解放行政」を確立させ、あらゆる差別の撤廃に向け運動を発展させよう。

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