主張

あらゆる差別の撤廃に立つ「人権条例」に



人権条例が成立

 都議会第3回定例会(10月5日本会議)で「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」(以下「人権条例」)が成立した。「人権条例」は18条と付則で構成されている。ポイントとなる点は、第1に、「いかなる種類の差別も許されないという人権尊重の理念が広く都民等に一層浸透した都市となること」を目的にしていること。第2に、都の責務として「人権尊重の理念を東京の隅々にまで浸透させ、多様性を尊重する都市をつくりあげていくため、必要な取組を推進する」としたこと。第3に、章立てで、「第2章 多様な性の理解の推進」(セクシュアル・マイノリティに対する差別解消)「第3章 本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進」を設けていること等である。

 私たちは、東京都が「条例概要案」を発表しパブリックコメントを募集した段階から、国際人権基準に合致し、被差別当事者の参画のもと、都内のあらゆる差別の撤廃を目的にした総合的な条例の制定を求めてきた。

実効性のある条例に

 しかし、成立した「人権条例」は問題が多い。根本的な問題は、「いかなる種類の差別も許されない」としながら、「セクシュアル・マイノリティ」と「本邦外出身者」の対策しか記載されていないことである。この問題点についてはパブリックコメントで約半数が問題としていたことであり、「都民」の意見も反映されていない。また、条例策定過程に当事者が参画していない、「表現の自由に留意」という条文(18条)があることなども大きな問題である。

 このような問題点は、多くの都議会議員も抱いていたことであり、都議会質疑を経て、小池知事は「今回提案した条例を契機といたしまして、オリンピック憲章にもうたわれております、いかなる種類の差別も許されないという理念が浸透した東京にしていくためにも、指針に掲げております17の人権課題を含めて、人権施策に総合的に取り組んでまいります。(9月26日代表質問への答弁)」と答弁せざるを得なかった。この小池知事の答弁の意味は、「人権条例」は「東京都人権施策推進指針」に記載している「17の人権課題」を含めたあらゆる差別の撤廃が目的であり、そのために政策を確立し実現する都の責務があるということである。

 小池知事答弁も踏まえて、今後の運動課題は、差別の現実を社会的に訴え、個別人権課題についてこれまで以上の積極的な対策を「人権条例」の具体化として求めていくことである。特に「部落探訪」差別事件などインターネット上の差別事件の解決に向けた具体的な対策が確立されなければならない。このように具体的な差別事件に対する救済や再発防止策など実効性を求めながら、国際人権基準に合致し、被差別当事者が参画した、真に都内のあらゆる差別の撤廃に役立つ「人権条例」に修正させていかなければならない。

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