主張

大胆な広範囲に及ぶ差別撤廃人権政策の実現を



 都連は、9月13日、「2025年度部落解放事業要求書」と「『情報流通プラットフォーム対処法』成立・公布にあたってインターネット上の部落差別の根絶に向けた要望書」を東京都に提出した。

 東京都は「いかなる種類の差別も許されない」とする「東京都人権尊重条例」を2018年に制定し、「人権尊重の理念が広く都民等に一層浸透した都市となることを目的」にしたが、現状は差別意識の悪化を示している。2023年8月に実施された「人権に関する都民意識調査」では、部落問題の認知度の減少傾向、結婚に対する態度の悪化傾向など「浸透」には程遠い現状にある。

 このような低い人権意識を反映し、戸籍謄本等不正取得事件、土地差別調査事件、都知事選挙掲示板差別ポスター掲示事件、就職差別を助長するテレビ番組「ワイドナショー」問題の発覚、削除されず拡散し続けるインターネット上での差別情報など都内の被差別部落出身者の平穏な生活は差別によって脅かされている。

 一方、国連「ビジネスと人権に関する作業部会」は、日本訪問調査の結果を今年の5月に公表し、自治体、企業、労働組合、市民社会などすべての関係者が指導原則が示す権利や義務、責任の理解を深めるよう一層努力しなければならないと指摘した。

 また、「情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)」が、5月に公布され、一定規模以上のプラットフォーム事業者に対し、権利侵害情報の流通防止措置等の義務が課されることになった。施行は公布から1年以内とされている。

 このようにネット上の誹謗中傷、差別や人権侵害に対する対策が動き始めようとしている。また、国際社会からも人権の確立が強く要請されている。東京都においても「部落差別解消推進法」「東京都人権尊重条例」に基づき、従来の施策を見直し、あらゆる差別の撤廃に向けた計画的・効果的な政策の実施が必要だ。

 都教委は、人権教育の推進に向け人権尊重教育推進校を約50校設置しているが、2000校以上ある公立学校の2・5%以下である。全校で人権教育を義務付けるぐらいでないと若い世代の「部落問題認知度」は上がっていかない。都内の私立学校ではどの程度人権教育が推進されているのか、その実態さえつかめていない状況である。

 また、都は「第2期東京都性自認及び性的指向に関する基本計画」を策定し、「行政文書の性別欄の記載について、個々の施策の目的等を踏まえながら、特別な理由のないものについては廃止すること」としたが、都内の高等学校等新規卒業者が就職の時に使用する履歴書(全国高等学校統一応募用紙)には性別欄が未だに残っており、都の政策の矛盾を露呈している。

 さらに都は「東京都人権尊重条例」に基づき、都内でおこなわれたヘイトスピーチを公表しており、「条例」の施行以降、11区市でヘイトデモや集会が40回(都に通報されたもののみ)行われており、公表しただけではヘイトデモ等は根絶されないことを示している。

 差別を完全に撤廃し、人権が確立された東京都をつくるため都は本気になっていただきたい。私たちは、こうした差別の現実を踏まえ、「2025年度部落解放事業要求書」を提出した。今日、差別は一件たりともあってはならない社会問題であることを踏まえ、全庁的に、また区市町村とも連携した大胆な広範囲に及ぶ差別撤廃、人権政策が実現されなければならない。

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