「全国部落調査」復刻版出版事件裁判の証人尋問が2020年8月から11月にかけておこなわれ、原告側は9人が証言台に立ち、被告鳥取ループ・示現舎の行為を厳しく批判した。一方被告らは、「判決が出ても(出版やネット掲載は)やめない」などと開き直った。裁判は3月18日に結審となり5月以降判決が出される見通しである。裁判闘争を強化していこう。
8月31日におこなわれた第1回証人尋問には、松島都連副委員長が証言台に立った。松島副委員長は兄弟や親せきが受けた結婚差別や自身の差別体験を証言するとともに東京の差別の実態や東京で地方から出てきた多くの部落出身者が出自を隠して生きている実態を訴えた。
裁判の争点
裁判では次の5点が争点になっている。
1点目は、「復刻版」出版やネット掲載で被害があるかどうかである。電話での問い合わせやメルカリ販売事件、部落マップ事件など被害が出ている。
2点目は、「復刻版」による地名の公表が人格権の侵害にあたるかどうかである。部落地名総鑑同様に被差別部落の所在地一覧を出版したりネットに掲載したりすること自体が差別を助長し、被差別部落出身者の人権を侵害し、プライバシーを侵害するものであり、明確に人格権の侵害である。
3点目は、原告や行政がこれまで部分的に部落の地名を公表してきたが、これが「復刻版」の出版禁止と矛盾しないかどうかである。原告が公表するのは差別をなくすためであり自ら希望しているが、被告らの行為は晒しであり、アウティングトとカミングアウトは明確に区別されなければならない。
4点目は、原告自身が新聞などで部落出身をカミングアウトしているが、被告らの公表行為(晒し)がプライバシー侵害にあたるかどうかである。公表の大原則は当事者が希望または承諾していることである。また目的が明確で公表の範囲と媒体が明確になっていて当事者が選択できなければならない。しかし被告らは誰の承諾、同意もとっていない。
5点目は、原告に訴える資格があるかどうかである。現在では、部落に住んでいるか住んでいたか、あるいは親戚が住んでいるなどのルーツを持っているものが被差別部落出身とみなされて差別されるもしくは差別される可能性を持っており、十分に原告の資格はある。
大詰めを迎えた裁判
裁判は2016年提訴から5年経過しいよいよ大詰めを迎えた。被告らの行為は部落差別が現存する今日の社会情勢下では部落差別を助長・煽動する許しがたい差別行為である。長年にわたる行政や企業、宗教団体、労働組合などとの部落差別撤廃に向けた取り組みの成果を台無しにするものであり、全国水平社以来の部落解放運動を冒涜するものである。裁判闘争勝利にむけ闘いを強化しよう。結審には東京地裁に結集しよう。