主張

部落差別の撤廃に向け
行政責務を具体化させよう



人権をめぐる状況

 世界的に格差・貧困化が深刻化し、差別排外主義が極右政党の躍進とともに強まっている。日本でも同様の兆候があり被差別者の生活が脅かされている。最近では、自民党杉田議員の「生産性がない」発言(危険な優生思想)、東京医科大学の入試での女性受験者に対する点数操作、10府省庁の障がい者雇用の水増し事件、「職場の障がい者虐待 最多1308人(2017年度)」など日本社会に差別構造が根付いていることを示す報道が相次いだ。部落差別も「全国部落調査」復刻版出版事件、「部落探訪」事件、土地差別調査事件、戸籍謄本不正取得事件、差別落書や投書などが後を絶たたない。特にインターネット上を中心に解決できない案件が増加しつつある。

 このような現実を背景に2016年12月、「部落差別解消推進法」が成立、施行された。しかし、施行から2年度過ぎても「実態調査」含めて具体化されていない。法では、行政の責務を改めて明記している。国も東京都も区市町村も差別撤廃に向けその責任を果たしていかなければならない。

東京都の人権政策

 東京都では、「2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催都市として、人権尊重の理念がより一層社会に浸透していくことを目的として、『東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念実現のための条例(仮称)』を都議会に提出する準備(東京都ホームページより抜粋)」を進めている。東京都は「条例概要」を公表しているが、本質的な修正が必要である。「条例概要」では「条例」の目的として「いかなる種類の差別も受けることがなく」とあらゆる差別の撤廃を掲げているが、実際の対策としては「性自認や性的指向等を目的とする差別の解消」と「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消への取組」しかあげていないという根本矛盾がある。具体的には、オリンピック憲章(オリンピズム の根本原則6等)に掲げられている「人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、国あるいは社会的出身、財産、その他の身分などの理由によるいかなる種類の差別」や人種差別撤廃条約、障害者権利条約で明記されている「民族的もしくは種族的出身、出生、年齢、障害に基づく差別」、また、東京都人権施策推進指針であげている個別17の人権課題などを明記し、差別の現実を踏まえ、当事者参画のもと国際人権基準にそったあらゆる差別の撤廃に向けた総合的条例でなければ、世界に誇れるものとはいえない。

事業要求書の作成と提出

 強まる差別の現実、部落差別解消推進法制定、東京都人権条例策定の動きなどの状況の中で、都連は「2019年度東京都に対する部落解放事業要求書」を9月10日都連委員会で確認した。重点的要求は、第1に、「東京都人権条例」において部落差別撤廃という課題を明記し、「部落差別解消推進法」を踏まえ、取り組みを本格化すること。第2に、「全国部落調査」復刻版出版事件、「部落探訪」差別事件など悪質な差別事件が野放しになっていることを踏まえた対策の確立、特にインターネット上の差別に対する対策の確立、第3に、部落産業を巡る厳しい状況、また、日々の暮らしの面でも様々な相談が寄せられ、困難な実態が浮き彫りになっている。こうした現実を改善する方策の確立などである。

 差別の現実や当事者の生活の実態を踏まえ、部落差別の完全撤廃に向けた行政責務を東京都に具体化させる運動をつくっていこう。

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