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平成12年6月19日
東京都

人権施策推進のための指針骨子

 

人権施策推進のための指針骨子の発表にあたって

 首都であり国際都市である東京には、多くの人々が住み、働き、学んでいます。また、国内や世界の各地からたくさんの人々が訪れ、活動しています。そして、東京で暮らし、東京を訪れる人々は、多様な文化や価値観、ライフスタイルを持っています。
 そのような東京が抱える人権問題は、多様で複雑なものとなっています。また、時代環境の変化を受けて、プライバシーや遺伝子などの新しい課題も生じています。さらに、人権と人権が相反する状況や、自分の権利だけを主張することなどが問題となっています。個人が主張する人権が、基本的人権のあるべき姿から乖離している場合もあります。
 多様化、複雑化する東京の人権状況に対応して、人間の存在と尊厳を守り、活力ある安心して暮らせる東京、国際的に魅力ある東京を築いていく必要があります。このため、東京都は、21世紀を展望して、人権施策を推進するための指針を今秋を目途に策定することといたしました。
 この指針は、昨年12月の人権施策推進のあり方専門懇談会の提言を受けて策定するものですが、それに先だち、都民のみなさまのご意見やご要望をうかがうため、骨子をまとめました。
 ここでは、東京都が総合的に人権施策を推進していくための基本理念を示し、その実現のための道すじを明らかにしています。
 施策の展開に当たっては、都民、NPO、企業などの幅広い分野の参画と協力が必要です。その意味でも、広く都民のみなさまからご意見をお寄せいただきたいと思います。
 これを契機に、大いに議論が起こり、基本的人権が尊重される東京を実現するための確かな道しるべとして、実を結んでいくことを期待しています。

平成12年6月
東京都知事 石原慎太郎

目  次

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 第1章 人権施策の基本理念
  第1節 人間の存在と尊厳を守る都市
  第2節 人権施策の基本理念

 第2章 指針策定の背景
  第1節 人権をめぐる国内外の動向
   1 国際的な動向
   2 わが国の動向
  第2節 人権に関する現状
   1 人権に関する認識
   2 人権に関する現状

 第3章 指針の基本的な考え方
  第1節 指針の目的
  第2節 指針の性格
  第3節 指針の計画期間
  第4節 人権施策展開の観点と行政の役割

 第4章 人権施策の総合的展開
  第1節 救済・保護
  第2節 啓発・教育
  第3節 支援・助成

 第5章 指針の推進
  第1節 多様な主体の参画による推進
  第2節 東京都の推進体制
  第3節 施策の評価と見直し
  第4節 国及び自治体との連携

第1章 人権施策の基本理念

 第1節 人間の存在と尊厳を守る都市

 世界有数の国際都市、生活都市である東京では、さまざまな文化や価値観、ライフスタイルを持つ人々が往来し、居住し、活動している。
 また、首都である東京では、国際化、少子・高齢化、技術革新など時代環境の変化が急速に進展している。
 こうした中で、東京における人権の問題は、多様化・複雑化し、現在の法律や制度が追いつかないなどの状況がある。さらに、プライバシーや遺伝子の領域などにおいて新たな課題が生じている。また、人権尊重の考え方が定着しつつある一方で、権利だけを主張する風潮も生み出されている。
 現在及び今後の社会を展望したとき、活力ある安心して暮らせる東京、国際的に魅力ある東京であるためには、多様化・複雑化する人権状況に対応し、個人をいかす、人権尊重の公理を基礎とした都市をつくっていくことが重要である。
 そのためには、これまでの施策の成果を踏まえながら、人権の基本原理である人間の存在と尊厳を守ることを基軸に、従来の枠組みを越えた、新たな仕組みによる施策を展開することが必要であり、急を要する課題である。

 第2節 人権施策の基本理念

 東京都が推進する人権施策の基本理念は、人間の存在や尊厳が脅かされることなく、自らを律する自立した個人が、権利行使に伴う責任を自覚し、共存と共感で相互に支え合い、都民が世界に誇れる都市をつくることである。
 この理念を具体化する人権施策が目指す方向は、次のようなものである。
 第一に、安心して暮らせる都市である。そのために、人間の存在や尊厳を脅かす災害や犯罪などから人々を守るとともに、誰もが自由に行動し、コミュニケーションができる、安全に、安心して暮らせる都市をつくる。
 第二に、自由を享受できる都市である。そのために、個人が自由に希望に挑戦することで、新しい価値を創造する多様性と独創性を発揮し、社会的責任を果たすことができる都市をつくる。
 第三に、機会の平等を約束する都市である。そのために、性別や年齢、障害、出身、民族、国籍等を理由とする不合理な差別や偏見を受けることなく社会に参画し、その個性と能力を十分に発揮できる都市をつくる。
 第四に、自律・自立性に基づく人間の存在や尊厳を守る都市である。そのために、自由に選択し、行動する自律・自立した個人が、社会の連帯の力で人間の存在や尊厳を守るためのセーフティネットがある都市をつくる。
 第五に、国際的に魅力ある都市である。活力や国際競争力の低下等、さまざまな面で危機的状況に直面した東京を再生し、首都東京が世界都市として国際的な魅力やけん引力を高めるため、人権を守る都市をつくる。

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第2章 指針策定の背景

 第1節 人権をめぐる国内外の動向

 1 国際的な動向
 20世紀における二度にわたる世界大戦の反省から、平和の実現にとって人権の尊重が大切であるということが国際的な認識となった。このため国際連合(国連)は、昭和23年(1948年)に世界のすべての人と国とが達成すべき人権の基準として世界人権宣言を採択した。
 以来、国連はいわゆる国際人権規約をはじめ、人種差別撤廃条約、女子差別撤廃条約、児童の権利条約など人権を保障するための数多くの条約を採択した。また、国際婦人年や国際児童年、国際障害者年、国際高齢者年など重要テーマごとに国際年を設定し、加盟各国が人権を積極的に保障するように、さまざまな取組を行ってきた。
 平成5年(1993年)には、世界人権宣言採択45周年を機にこれまでの人権活動の成果を検証し、現在直面している問題、今後進むべき方向を協議することを目的としてウィーンにおいて世界人権会議が開催された。この会議において、すべての人権が普遍的であり、人権が正当な国際的関心事であること、また、人権及び基本的自由は、すべての人間が生まれながらに有する権利であり、それらの伸長及び保障は、政府の第一義的義務であることなどが確認された。
 これを受けて国連は、平成6年(1994年)の第49回総会において平成7年(1995年)から平成16年(2004年)までを「人権教育のための国連10年」とする決議を行い、人権教育のための国連10年行動計画を策定した。この決議では、すべての政府に対して、行動計画の実施に貢献すること、人権と基本的自由の尊重の強化のための努力を促進することなどを求めている。

 2 わが国の動向
 昭和21年(1946年)に基本的人権の尊重を基本理念の一つとする日本国憲法が制定されて以来、基本的人権を保障するためのさまざまな取組が行われてきた。
 近年においても、男女雇用機会均等法の改正や男女共同参画社会基本法の制定、児童買春・児童ポルノ禁止法の制定、外国人登録法の改正、犯罪被害者保護法の制定及び児童虐待防止法の制定など人権を保障するための法整備を図るとともに国際人権年などの国際年にも積極的に対応してきている。
 また、国際人権規約などの各種人権関係の条約も批准してきている。国際人権規約は締結国に権利の実現のためにとった措置等に関する報告を求めているが、日本国政府は平成8年(1996年)に報告を行っている。これに対して、国連人権委員会は、わが国の人権問題について多くの懸念事項の指摘や勧告を行いながらも、これまでわが国がとってきた法整備等の措置についてはこれを歓迎するという見解を採択している。
 さらに、国は、国連における「人権教育のための国連10年」の決議を受けて、平成9年(1997年)に「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画を策定した。この行動計画では、あらゆる場を通じて人権教育を推進すること、人権にかかわりの深い特定の職業に従事する者に対する取組を強化すること、女性、子ども、高齢者、障害者、同和問題、アイヌの人々、外国人、HIV感染者等、刑を終えて出所した人を重要課題として積極的に取り組むこととしている。また、地方公共団体等に対し、国内行動計画の趣旨に沿った自主的な取組の展開を期待するとしている。
 平成9年(1997年)には人権擁護施策推進法を制定し、人権教育・啓発のための施策と人権が侵害された被害者の救済のための施策の推進を国の責務とすることとした。この法律に基づいて設置された人権擁護推進審議会は平成11年(1999年)に、人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項について答申を行っている。
 都はこうした状況を踏まえながら、女性や子ども、高齢者、障害者、同和問題などの課題ごとに人権問題に取り組んできており、その中には、先駆的に展開している事業もある。

 第2節 人権に関する現状

 1 人権に関する認識
 首都東京では、国際化、少子・高齢化、通信・交通手段の高度化、産業構造の変化などが急速に進展する中で、人々の生活環境や人と人とのかかわりかたが変化している。
 また、都民の価値観やライフスタイルは、個人を基調とする考え方が浸透し、個性や自立性を重視する意識が広く定着している。
 こうした時代環境の流れは、個人の人権を尊重する気風をはぐくみ、人権に対する人々の関心を高めている。一方、自分の権利だけを主張し、他の人の人権に配慮しない人や自分の権利行使に責任を持たない人も生じさせている。
 都民の人権に関する意識や行動について、東京都が平成11年(1999年)6月に実施した「人権に関する世論調査」でみると、日本国憲法で保障されている基本的人権について、「知っている」と答えた人は96%である。しかし、基本的人権が尊重されている社会であると思いますかという問いに対しては、「一概にいえない」と回答した人と「そう思わない」と答えた人を合わせると72%となっている。
 また、自分より劣ったり弱い立場にある人に対して、差別的な行動や発言をしてしまったことが「ある」と答えた人は16%である。逆に、今までに自分の人権が侵害されたと思ったことが「ある」と答えた人は21%となっている。
 さらに、人権に対する考え方については、「一人ひとりの人権は、何よりも尊重されなければならない」と答えた人は41%である。一方、「一人ひとりの人権は、何より尊重されるべきだが、社会生活においては、ある程度の制約もやむを得ない」と答えた人は48%、「人権という名のもとに、権利の濫用が見られるので、むしろ制限すべきである」と答えた人は4%となっている。

 2 人権に関する現状
 東京の人権に関する現状について、「人権教育のための国連10年」国内行動計画で全国的に取組が求められている重要課題及び首都東京としての特性を反映した人間の存在と尊厳にかかわる課題、という観点から見ると、次のとおりである。

 ○ 女性
 東京では、女性がさまざまな分野で活躍し、働き方も多様化している。いわゆる改正男女雇用機会均等法が平成11年(1999年)4月に施行されたが、職場での差別的な処遇やセクシュアル・ハラスメントを訴える声は後を絶たない。
 さらに、夫やパートナーから暴力を受けている女性からの相談が増えており、深刻な問題となっている。

 ○ 子ども
 家庭で親などによって行われる子どもへの虐待(身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、養育の放棄又は怠慢)が大きな社会問題となっている。
 また、子どもを性の商品化する児童ポルノや買春も、子どもの人権に関する重要な問題である。
 さらに、子どもたちの間のいじめや教師による体罰は依然として残っている。

 ○ 高齢者
 高齢者人口の増加に比例して、高齢者に対する人権の侵害が深刻になっている。介護を要する高齢者の増加に伴い、家庭や施設において身体的・精神的虐待を受けたり、財産を勝手に処分されてしまうなどの問題が起きている。
 また、就職を希望する高齢者が、年齢を理由として採用の対象とされない場合がある。
 東京は高齢者のみの世帯が増加しているが、高齢者は保証人を探すことが難しいことなどから賃貸住宅を利用しにくいという問題がある。

 ○ 障害者
 東京では交通機関や道路、建築物などのバリアフリー化が着実に進んできているが、障害者が自由に行動でき、コミュニケーションできるためには不十分であり、まだ多くのバリアがある。
 障害者が職場や地域社会で差別を受ける例は少なくなく、入店を拒否されたり賃貸住宅への入居を拒否される場合もある。また、働く場が十分確保されておらず自立が妨げられている。
 医療機関や施設における知的障害者や精神障害者に対する身体的拘束や虐待なども問題となっている。

 ○ 同和問題
 同和問題に関する差別意識は着実に解消に向けて進んでいるが、差別落書きなどは依然として発生しており、最近ではインターネットを利用して悪質な差別文書を流す事例も起きている。
 また、就職に際して、差別につながるおそれの強い身元調査を行う企業もある。なお、同和問題を口実として何らかの利益を得るために、不当な要求を行う「えせ同和行為」が後を絶たず、同和問題の解決の妨げとなっている。

 ○ アイヌの人々
 アイヌの人々はこれまでさまざまな差別を受けてきている。また、アイヌ民族固有の文化や伝統も多く失われてきた。
 東京にもアイヌの人々が暮らしているが、アイヌの歴史や伝統、文化などについて正しく認識されていないための偏見がある。

 ○ 外国人
 東京には、在日韓国・朝鮮人をはじめ、多様な国籍や文化、生活習慣を持った多くの外国人が暮らしている。しかし、日本人の外国人に対する偏見に加え、賃貸住宅への入居の拒否や就労に関する差別、あるいは、外国人児童・生徒へのいじめやいやがらせ、差別発言など、外国人が生活する上で多様な問題が起きている。

 ○ HIV感染者等
 HIV感染者は年々増加しており、東京のHIV感染者は日本の3分の1を占めている。中でも20代、30代の日本人男性の感染者が増加している。しかし、この人々は、感染者であることが明らかになると退職を余儀なくされたり、施設への入所や診療を拒否される場合がある。
 また、ハンセン病の患者については、適切な治療により完治する病気であるにもかかわらず、依然として誤った知識や偏見が残っており、ハンセン病療養所入所者について社会復帰が困難であるという問題もある。

 ○ 犯罪被害者やその家族
 最近、犯罪被害者やその家族の人権が大きな問題となっている。被害者やその家族は直接的な被害のみならず、精神面、生活面、経済面等においてさまざまな被害を受けており、その後の刑事司法過程において、いわゆる二次的被害を受けて精神的被害がさらに深くなる場合や、マスメディアの報道などによって人権が侵害される場合もある。

 ○ その他の人権問題
 このほかにも、次のような問題が人権問題とされている。
 性同一性障害のある人々などに対する偏見があり、嫌がらせや侮べつ的な言動、雇用面における制限や差別、性の区分を前提にした社会生活上の制約などの問題がある。
 犯罪の被疑者、その家族及び犯罪者の家族の名誉やプライバシーの侵害、偏見の問題もある。刑を終えて出所した人についても、偏見が住居の確保や就職を困難にしている問題がある。
 路上生活者(ホームレス)は、その自立を妨げるさまざまな要因があり、住居の確保はもちろん、就職が困難であるほか暴行を受けるなどの問題を抱えている。行政情報や顧客データ、医療カルテなどの個人情報の流出や漏えいによる、個人のプライバシーの侵害が生じている。プライバシー保護の問題は都民生活にかかわる重要な課題である。
 さらに、環境を人権の観点からとらえる動きや知る権利、自己決定権などが新しい人権として主張されるようになってきている。

 多様化、複雑化する人権問題は、人間の存在や尊厳を脅かすものであり、この指針における人権施策の基本理念を実現するために、新たな視点に立って総合的に人権施策を推進していくことが、緊急かつ重要な課題となっている。

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第3章 指針の基本的な考え方

 第1節 指針の目的

 21世紀を展望して、東京都が総合的に人権施策を推進していくための基本理念を示し、その実現のための道すじを明らかにする。

 第2節 指針の性格

 1 都における今後の人権施策の目標を示し、人権尊重の視点に基づいた行政運営を行うに当たっての施策展開の基本的な考え方を示すものである。
 2 多様かつ複雑な人権問題に対応するため、個別分野の枠組みを越えた総合的な人権施策の体系化を図るものである。
 3 都民、NPO、企業、区市町村、国などに対して、都が目指す方向を示すことにより、その参画と協力を求めていくものである。
 4 人権施策の基本理念を効果的かつ効率的に実現するためのものである。
 5 首都東京にふさわしい国際的な視点に立った人権感覚を身につけることを職員に求めるものである。
 6 「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画の趣旨に積極的に対応するものである。

 第3節 指針の計画期間

 この指針の具体的施策の展開に当たっては、「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画と合わせて、当面、平成12年(2000年)から平成16年(2004年)までを計画期間とする。さらに、その成果を踏まえて、計画を改定する。

 第4節 人権施策展開の観点と行政の役割

 1 人権状況に対応した観点
 東京都では、これまで個別の人権分野にかかわる課題の所管部局が、固有の課題の経緯と問題状況を踏まえて施策を実施してきている。今後もそれぞれの所管部局が各施策体系のもとで、指針の基本理念を尊重しながら、必要な施策を実施していくことを施策の基本とする。
 今日、人権状況の特徴からみると、他者の人権への配慮の不足などから生ずる住民相互の間での人権侵害が顕著になっている。不当な差別に見られるような一方的な人権侵害に加え、それぞれの人権を根拠とした主張が衝突する問題なども起きている。
 人権については、さまざまな価値観に基づく、多様な考え方が存在しており、具体的な人権問題の解決に取り組むに当たっては、それぞれの状況に配慮しながら、公共の福祉の観点から調整していくことが必要である。
 このようなことから、従来の個別施策の枠組みだけでは、迅速かつ的確に問題解決を図ることが困難な場合には、これまでの枠組みを越えた、人間の存在と尊厳を守ることを基軸に、総合的な観点と仕組みによって人権施策を推進していく。

 2 行政の役割
 個人の自律・自立性の確保を図るため、都は、個人の力に着目し、個人の力を強化し、その発意を側面から援助することを基本として、施策を展開する。
 また、行政と都民やNPO、企業などと相互に連携し、人権問題の解決のため、適切な役割分担とパートナーシップを確立する。
 さらに、企業が人権尊重の理念に立った企業活動をすることは、人権の意義を社会に広く浸透させるためにも大きな力となる。そのため、行政は、企業が社会に貢献することによって、自らの社会的な評価や、イメージを高めようとする活動意欲を促すための条件整備を行う。

 3 3つの観点
 人権施策を総合的に展開するための観点は、個々の人権問題を解決するための過程に着目し、人権が侵害されたり、侵害されるおそれのある人のための救済・保護、人権を侵害しないようにするための啓発・教育、広く人権を守るための活動に対する支援・助成の3つとする。
  (1) 救済・保護
 救済・保護が必要な人権問題は、現に人権侵害が行われていたり、行われるおそれがある状況から、行政が責任ある主体として、民間との連携も視野に入れて人権を回復することである。
 そのために、人権相談や救済・保護機関の連携などのネットワーク化の手法等を活用するとともに、必要に応じて施策を強化し、地域や社会で人権を守っていく。
  (2) 啓発・教育
 行政や民間が主体となって、あるいは両者の連携によって人権の意義と価値、人権に配慮した態度や行動を共通認識として社会へ浸透させるための基盤づくりを行う。
 そのため、民間活動の自主性を尊重し、行政と民間の新たな役割分担の下、行政の多様なかかわり方や手法を工夫し、啓発媒体や教育機会等の多角的な活用やあらゆる年齢層の人たちを対象とした多層的な施策を展開していく。
  (3) 支援・助成
 行政は、財政的な支援だけでなく、広くさまざまな手法やシステムを工夫し、都民やNPO、企業などの参画による多様な実施体制を構築し、広く社会の連帯の力で人権を支える仕組みをつくる。
 そのため、社会的弱者・少数者に属する個人の力を強化するとともに、民間企業の参入のための条件づくりを図るなど、民間活動を優先しつつ、個人のニーズに応えた施策を展開していく。

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第4章 人権施策の総合的展開

 第1節 救済・保護

 1 視点
 行政は、人権侵害に対する救済・保護の責任ある主体として、NPO等との協働を視野に入れ、現に人権が侵害されたり、侵害されるおそれがある人に対し、解決のための助言をしたり、一時的に保護するなど、人権を回復するための救済・保護にかかわる施策を展開する。

 2 現状
 相談機関の多くは個別課題ごとに置かれており、多様化・複雑化する人権問題に対応するための相互の連携が十分でなく、迅速かつ総合的な対応が困難な場合がある。また、相談機関から保護機関への連携が必ずしも十分ではない。
 相談機関の多くを占めるNPO等の民間団体は救済・保護に大きく貢献している。そのため、効果的な救済・保護施策を講じていくためには、NPO等との協働が不可欠であるが、行政のNPO等に対する働きかけは十分とはいえない。

 3 施策展開の基本的な考え方
 人権侵害から迅速に人権を回復するため、都民、NPO等の民間団体との協働のもとに、東京都は人権相談機関や保護機関との連携や調整を図り、都民の利用しやすい相談・保護システムを構築する。
 また、裁判をはじめとする現行法制度による人権問題の解決には多くの時間や労力を要するなど、多様化・複雑化する人権問題の迅速な解決には限界が生じている面もあることから、人権侵害に対する調整・調停機関の設置や具体的な救済・保護の手法等について、新しい発想と創造性をもって研究を進めていく。

 4 施策の体系
    +−人権相談への対応−−−−−−−−−+
    |        +−−−−−−−−−+
    |        |  +−相談機関ネットワークの構築
    |        |  +−トータルコーディネート部門の設置
    |        +−−+
    |           +−コーディネーターの養成
    |           +−相談機関情報の収集・分析・提供
    |
  経 +−相談機関と保護機関等との連携−−−−−−−−−+
  済 |        +−−−−−−−−−−−−−−−+
  ・ |        |  +−相談機関と保護機関とのネットワーク化
  保 |        +−−+−一時保護機能の充実
  護 |           +−被害者の経済的自立と心的ケア
  に |
  か−+−救済・保護制度の整備−−−−−−−−−−−−−+
  か |        +−−−−−−−−−−−−−−−+
  わ |        |  +−地域に密着した救済・保護機能の強化
  る |        +−−+−施設入所サービス評価事業の促進
  施 |           +−地域福祉サービスの評価基準の策定
  策 |
    +−NPO等との協働−−−−−−−−−−−−−−−+
    |        +−−−−−−−−−−−−−−−+
    |        |  +−専門相談への支援
    |        +−−+
    |           +−民間相談・保護機関との連携・協力
    |
    +−救済・保護手法の研究−−−−−−−−−−−−−+
             +−−−−−−−−−−−−−−−+
             |  +−新たな調停・調整機関の検討
             +−−+
                +−第三者機関の設置の検討

  ア 人権相談への対応策
 現に人権が侵害されたり、侵害されるおそれのある人が抱える問題を解決するための助言が適切に行われるようにする。そのために、民間と行政の枠組みを超えた相談機関ネットワークの構築や、相談機関相互及び相談機関から救済・保護機関への連携を円滑に行う役割を果たすトータルコーディネート部門の設置などを進める。
  イ 相談機関と保護機関との連携
 被害者の人権を迅速に回復するために、相談機関と救済・保護機関との連携体制を整備する。そのために、相談機関と救済・保護機関との間のネットワーク構築や、被害者を一時的に保護する機能の充実などを進める。
  ウ 救済・保護制度の整備
 都民が身近な場所で救済・保護施策を受けることができるようにするための環境整備を進め、サービスの質の向上を図る。そのために、地域に密着した救済・保護機能の強化や、施設入所や地域福祉に関するサービス内容の評価などを行う。
  エ NPO等との協働
 行政にはないノウハウや機動力などを持つNPO等の特性を生かし、多様な手法によって人権侵害の解決が図られるようにする。そのために、NPO等が行っている専門相談への支援を行うとともに、民間相談・保護機関との連携を強化する。
  オ 救済・保護手法の研究
 人権問題が多様化・複雑化する中で生じた現行法制度の限界を打開するための新たな方策を研究する。そのために、中長期的視点から新たな調停・調整機関の設置や第三者機関設置の検討など、裁判外紛争処理制度の手法について検討を進める。

 第2節 啓発・教育

 1 啓 発
  (1) 視点
 行政だけでなく、NPOや企業等も主体となり、あるいは主体相互が連携して、人権の意義が広く社会に浸透し、人権尊重の理念を定着させ、人々の態度や行動に結びつくよう人権啓発にかかわる施策を展開する。
  (2) 現状
 人権尊重の理念の普及や差別の解消のため、東京都においても国や区市町村と連携しながら、さまざまな啓発活動を行ってきた。
 しかし、これまでの啓発活動が知識の普及に偏りがちであったため、都民一人ひとりが自分自身の問題として、人権尊重の理念について理解を深めるまでになっておらず、人々の態度や行動において人権への配慮が必ずしも十分根付いていない。
 また、行事等がマンネリ化していること、啓発活動が都民に十分知られていないこと、あるいは、実施主体相互間の連携が必ずしも十分でないことなども効果が十分に上がらない要因になっている。
  (3) 施策展開の基本的な考え方
 都民の間にさまざまな文化や多様な考え方を容認する共生の心や思いやりの心を育むため、人権の意義を広く社会に浸透させ、人権問題を都民一人ひとりが自分自身の課題としてとらえられるよう啓発活動を展開する。
 また、社会的弱者・少数者が自ら行うさまざまな啓発活動への支援を行っていく。啓発を効果的に進めるために、行政だけではなく、NPOや企業等も主体となり、それぞれが協働、連携し、社会全体で取り組んでいく。啓発の手法としては、法の下の平等、個人の尊重といった普遍的視点からアプローチする手法と、「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画で重要課題とされている女性、子ども、高齢者、障害者、同和問題、アイヌの人々、外国人、HIV感染者等、刑を終えて出所した人に加え、犯罪被害者やその家族の人権、性同一性障害のある人々などの課題を視野に入れた個別的な視点からアプローチする手法とを組み合わせて効果的な啓発を行う。さらに、社会の隅々にまで啓発効果が広がるよう、双方向の啓発手法や都民の感性に訴える手法等新しい手法を開発する。また、対象となる人々を考慮して、多様な啓発主体や媒体を活用し、多角的・多層的に施策を実施する。マスメディアは人々に大きな影響力を持っていることから、その効果的な活用を図る。
 人権啓発は、都民一人ひとりの心のあり方にかかわるものであることから、施策展開に当たっては、押しつけにならないよう留意する。
  (4) 施策の体系
     +−都民への啓発−−−−−−−−−−−−−−−−−+
     |            +−−−−−−−−−−−+
     |            | +−啓発行事の実施
     |            +−+−啓発資料(冊子・ビデオ等)の作成
     |              +−啓発情報の収集・提供
     |
     +−企業等への啓発−−−−−−−−−−−−−−−−+
     |            +−−−−−−−−−−−+
     |            | +−各種業界団体に対する啓発
   啓 |            +−+
   発 |              +−経営者等に対する啓発
   に |
   か +−民間の啓発活動への支援−−−−−−−−−−−−+
   か−+            +−−−−−−−−−−−+
   わ |            | +−活動・交流の場の提供
   る |            | +−NPO等の自主啓発支援
   施 |            +−+
   策 |              +−啓発資料の提供
     |              +−人権尊重に寄与する作品等の表彰
     |
     +−人権啓発リーダー育成−−−−−−−−−−−−−+
     |            +−−−−−−−−−−−+
     |            | +−人権啓発リーダー養成講座
     |            +−+
     |              +−啓発の手引の作成
     |
     +−啓発手法等の開発−−−−−−−−−−−−−−−+
                  +−−−−−−−−−−−+
                  +−−−啓発手法等の開発
  ア 都民への啓発
 人権の意義を広く社会に浸透させるため、国、区市町村やNPO、企業との連携を図りつつ、多層的・多角的に啓発活動を展開する。
 そのため、人権週間や憲法週間の行事等を実施するとともに、冊子やビデオ等の各種啓発資料を作成し、その活用を図る。また、各種啓発情報の収集、提供を行う。
  イ 企業等への啓発
 人権尊重の社会の実現のために企業の果たす役割は重要である。そのため、企業等において人権の意義を浸透させるよう、各種業界団体に対する啓発や経営者等に対する啓発事業を展開する。
  エ 民間の啓発活動への支援
 人権問題を都民一人ひとりが自分自身の課題としてとらえることにつながるよう、社会的弱者・少数者やNPO等の自主啓発活動を支援していく。そのため、活動・交流の場の提供、啓発資料の提供などを行う。
 また、人権尊重に寄与する作品を表彰する。
  オ 人権啓発リーダー育成
 NPOや企業等において、きめ細かな啓発活動が行われ人権意識の定着、浸透が図られるよう人権啓発リーダーの育成にかかわる施策を展開する。
 そのため、人権啓発リーダー養成講座を開催してリーダーを養成し、NPOや企業等における活動を支援する。また、啓発の手引を作成し、配布し、NPOや企業等での啓発活動に資する。
  カ 啓発手法等の開発
 都民の理解と共感が得られるよう、効果的な啓発活動を展開する。
 そのため、従来の一方向の啓発から双方向の啓発を行うための手法や、都民の感性に訴える新しい啓発手法等の研究・開発を行う。
 また、パブリシティのあり方についても研究し、マスメディアに対し効果的な情報提供を行う。

 2 教 育
  (1) 視点
 教育については、行政だけでなく、民間も主体となって、あるいは両者の連携によって、人権の意義を社会へ浸透することが重要である。公私が協働し、学校教育や社会教育等を通じて、人権が普遍的に実現された社会を構築する。
  (2) 現状
 生涯学習の視点に立って、学校教育及び社会教育等を通じて人権の意義やその重要性が一人ひとりに知識として確実に身に付き、人権問題を直観的にとらえる感性を育てることにより、日常生活において人権への配慮が態度や行動に現れるような人権感覚のかん養を目指してきた。しかし、現実の差別や社会的な不利益に関する諸状況への理解は、必ずしも十分であるとは言い難い。
 また、教育の手法としては、主に講義形式によって行われてきた。しかし、この方法は、基礎的な教育を実施する場合には適し、一度に多くの人々に一定レベルの知識を伝授することができるが、単に知識の理解にとどまり、実際の行動につながりにくい面がある。
 教員や指導者についても、ややもすれば知識を一方的に教えるにとどまり、人権教育の理念について、必ずしも十分認識していない者が見られるとの指摘もある。
  (3) 施策展開の基本的な考え方
 施策の展開に当たっては、偏見による差別や人権侵害に関する基本的な知識の普及に努め、異なる文化、慣習、価値観等を理解し、これを尊重しあう共生の心を育てていくとともに、単に知識の伝授にとどまることなく、教育の成果が実際の行動となって現れるようにしていく。
 教育の手法については、法の下の平等や個人の尊重といった普遍的な視点からのアプローチと、「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画で重要課題とされている、女性、子ども、高齢者、障害者、同和問題、アイヌの人々、外国人、HIV感染者等、刑を終えて出所した人に加え、犯罪被害者やその家族の人権、性同一性障害のある人々などの課題を視野に入れた個別的な視点からのアプローチがあり、この両者が相まって、人権尊重の理念についての理解が深まり、さまざまな差別問題が解消されていくものと考えられる。幼児から高齢者まで対象者の発達段階や学習のレベルなどに応じ、従来の講義形式に加えて、家庭、学校、地域社会等における日常生活の経験など身近な問題を具体的に取り上げ、さまざまな人々との交流や対話の機会を設けるなど、交流型、参加・体験型の学習を充実するとともに、フィールドワークなど多彩な教育技術の導入を図り、参加者の意欲を喚起する創造的な学習を展開する。
 指導に当たっては、教育関係者だけでなく、人権に関し幅広い見識のある人材を活用し、指導者層の充実を図るとともに、専門的な資質を培う研修や講座を開催し、地域や家庭における教育を支援していく。
 教育を効果的に進めるためには、関係機関との協力体制の強化や民間団体や企業との連携が欠かせない。特に社会教育においては、行政と民間団体との性格や役割の違いを踏まえつつ、それぞれが主体となって、あるいは両者の連携によって、人権の意義を社会に浸透させることが必要である。民間団体とのさまざまな連携によって地域社会づくりを推進し、人権が尊重される心豊かな社会を実現していく。なお、人権に関する教育は、一人ひとりの心の在り方に密接にかかわる問題であることから、その性質上押し付けにならないように留意する必要がある。
  (4) 施策の体系
         +−人権尊重教育の研究推進−−−−−−−−−−−−+
         |         +−−−−−−−−−−−−−−+
       学 |         |+−区市教育委員会との連携・協力
       校 |         ++−人権尊重教育研究奨励
       教 |          +−人権尊重教育研究補助
     +−育−+−人権尊重教育推進校などの設置−−−−−−−−−+
     | 活 |        +−−−−−−−−−−−−−−−+
     | 動 |        | +−人権尊重教育推進校の設置
     |   |        +−+
     |   |          +−人権尊重教育推進校委員会の設置
     |   +−人権尊重教育の普及啓発−−−−−−−−−−−−+
     |   |         +−−−−−−−−−−−−−−+
   教 |   |         |+−教員用指導資料の作成
   育 |   |         ++
   に |   |          +−児童・生徒用学習資料の作成
   か |   +−人権尊重教育資料センターの運営−−−−−−−−+
   か−+             +−−−−−−−−−−−−−−+
   わ |             |+−資料の収集及び閲覧
   る |             ++
   施 |              +−同和教育等に関する基礎的研究
   策 |   +−人権学習の普及啓発−−−−−−−−−−−−−−+
     |   |         +−−−−−−−−−−−−−−+
     | 社 |         |+−啓発資料の作成
     | 会 |         ++
     | 教 |          +−教材ビデオの製作
     +−育−+−人権学習の指導研修−−−−−−−−−−−−−−+
       活 |         +−−−−−−−−−−−−−−+
       動 |         |+−社会教育関係団体指導者等の研修
         |         ++−社会同和教育研究会
         |          +−人権教育研究奨励
         +−人権学習の促進−−−−−−−−−−−−−−−−+
                   +−−−−−−−−−−−−−−+
                   +−−区市町村補助
  ア 人権尊重教育の研究推進
 都の実態に即した人権尊重の教育の一層の充実を図るため、都と区市教育委員会の指導主事で構成する推進委員会等を設置し、推進の基本的な考え方と具体策等について研究協議を行う。
 また、人権尊重の教育に関する基礎的・実践的研究を行う教員(個人又はグループ)や教育研究団体に対して助成を行う。
  イ 人権尊重教育推進校などの設置
 都の実態に即した人権尊重の教育を研究・実践し、その成果を広く全都の学校に役立てるため、人権尊重教育推進校等を設置する。
  エ 人権尊重教育の普及啓発
 人権尊重の教育の一層の充実を図るため、人権尊重の教育の推進に関する教員用指導資料及び児童・生徒用学習資料を作成し、活用する。
  オ 人権尊重教育資料センターの運営
 人権尊重の教育に関する資料を収集・整理し、閲覧に供するとともに、映画フィルム及びビデオテープの貸出を行う。
 また、同和教育等に関する基礎的研究を行い、人権尊重の教育の推進に役立てる。
  カ 人権学習の普及啓発
 社会教育関係職員や社会教育関係団体指導者等が人権問題に対する正しい理解と認識を深めるとともに、各種事業の企画や実践活動、あるいは自主的な学習等の参考となるよう、啓発資料や教材ビデオを作成し配布する。
  キ 人権学習の指導研修
 社会教育関係職員及び社会教育関係団体指導者等を対象に、人権問題に対する正しい理解と認識を深めるよう、研修や公開講座を実施する。
 また、都の実態に即した社会同和教育・人権教育のあり方やその内容・方法等について研究していくとともに、社会同和教育・人権教育に関する自主的な研究を行う社会教育関係職員(個人又はグループ)に対して助成を行う。
  ク 人権学習の促進
 区市町村における社会同和教育・人権教育の推進を図るため、一定規模の事業(学級・講座・集会等)に対して、経費の一部を補助する。

 3 研 修
  (1) 視点
 東京都の仕事はすべて人権に深いかかわりを持つことから、職員一人ひとりが、首都東京にふさわしい国際的視点に立った人権感覚を身につけ、都民の切実な訴えや期待を誠実に受け止めて、人権に配慮した公務が行えるよう、都の諸機関において職員研修等を推進していく。
  (2) 現状
 人権に関する研修としては、新任研修における人権研修、同和問題研修、男女平等研修等が行われている。
 しかし、「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画の重要課題やその他の課題に共通する普遍的人権についての取組は一部にとどまっており、職務に応じた人権研修については、体系立った対応がなされていない。
  (3) 施策展開の基本的な考え方
 都民に密着した職務に携わる、教員・社会教育関係職員、医療・保健関係職員等、福祉関係職員等について、それぞれの分野ごとに職務に応じた人権研修を実施する。また、公務遂行に際して都民一人ひとりの人権を尊重した対応ができるよう、職場ごとの行動マニュアルを作成する。
  (4) 施策の体系
     +−職務に応じた人権研修−−−−−−−−−−−−+
     |                       |
   研 |            +−−−−−−−−−−+
   修 |            |+−教員・社会教育関係職員
   に |            |+−医療・保健関係職員等
   か−+            |+−福祉関係職員等
   か |            ++
   わ |             +−消防職員
   る |             +−警察職員
   施 |             +−その他の職員(一般行政職員)
   策 |
     +−職場ごとの人権行動マニュアルの作成−−−−−+
                             |
                  +−−−−−−−−−−+
                  +−−職場ごとの人権行動マニュアルの作成
  ア 職務に応じた人権研修
 教員・社会教育関係職員、医療・保健関係職員等、福祉関係職員等、消防職員、警察職員、その他の職員(一般行政職員)について、それぞれの分野ごとに、人権に配慮した公務を遂行できるよう、職務に応じた人権研修を実施する。
  イ 職場ごとの人権行動マニュアルの作成
 職員が職務を遂行するに当たって、人権に配慮した行動がとれるよう職場ごとに人権行動マニュアルを作成する。

 第3節 支援・助成

 1 視点
 都民やNPO、企業などの多様な主体の参画による、社会の連帯の力で、広く人権を守る仕組みをつくるため、さまざまな活動に対する支援・助成にかかわる施策を展開する。

 2 現状
 従来、人権にかかわるサービスのほとんどを行政とNPOが担ってきたが、相互の連携が十分でなく、それぞれの主体が個々、独立に活動している場合が多い。
 少子・高齢社会における新しい社会システムを支えるNPOの役割に対する期待は高まっている。しかし、具体的な人権施策につながる行政とNPOとの連携や協働についてはまだ不十分であり、時代の変化に対応したパートナーシップの確立が求められている。一方、人権は、従来ビジネス化になじまない分野とされてきたことから、企業が人権にかかわるサービスの中心的な担い手として登場することはほとんどなく、ほぼ行政が主導的な役割を果たしてきた。そのため、サービス展開のスピードや柔軟性に欠け、現実の都民ニーズに十分応えているとはいい難い状況がある。

 3 施策展開の基本的な考え方
 都と都民、NPO、企業、大学などの多様な連携・協働のもとに、社会の連帯の力で人権を守る仕組みを作っていく。
 都は、都民、NPO、企業などが活動しやすい環境づくりに努めるとともに、プライバシーガイドラインをはじめ、人権を守るためのルールづくりなどの基礎的な条件整備を行い、都民、NPO、企業などとの新しいパートナーシップを築く。
 個人の自律・自立性を基本として、個人の力を強化し、個人のニーズを満たすことを施策の目標とする。
 支援・助成にかかわる施策の展開に当たっては、サービスのスピードや柔軟性、多様性の確保が必要な領域については、できる限り民間主導で事業を展開することとする。そのため、行政は必要な条件整備を図っていく。
 しかし、住民福祉を実現する立場から、民間によるサービスの供給が困難である領域については、行政が担っていく。
 また、施策の実施に際しては、信頼性等を考慮しつつ、民間の技術力、経営力及び資金力等の民間活力の積極的な活用を図っていく。

 4 施策の体系
    +−社会的弱者・少数者の自立支援−−−−−−−−−+
    |       +−−−−−−−−−−−−−−−−+
    |       |+−協定弁護士との提携等の検討
    |       ++−バリアフリーで安全な都市環境の整備
  支 |        +−住居の確保支援
  援 |
  ・ +−社会的弱者・少数者の発言の場の確保−−−−−−+
  助 |       +−−−−−−−−−−−−−−−−+
  成 |       |+−外国人都民会議等のフォーラムの開催
  に−+       ++−企業等への講座助成
  か |        +−宣伝技術の研修支援
  か |
  わ +−企業等の自主的な取組への支援−−−−−−−−−+
  る |       +−−−−−−−−−−−−−−−−+
  施 |       |+−人権関連ビジネス機構の設立誘導
  策 |       ++
    |        +−業態ごとの自主ガイドライン策定支援等研究
    |
    +−人権施策への民間活力の導入−−−−−−−−−−+
            +−−−−−−−−−−−−−−−−+
            |+−人権ビジネスの事業化の基盤づくり
            ++
             +−人権標準ガイドラインの研究

  ア 社会的弱者・少数者の自立支援
 社会的弱者・少数者の不合理な差別を解消するため、自立を支援する施策を展開する。
 そのため、住居の確保の支援やバリアフリーで安全な都市環境の整備などを推進する。
  イ 社会的弱者・少数者の発言の場の確保
 社会的弱者・少数者の意見が社会で幅広くとりあげられる機会が少ないため、発言の場を確保する施策を展開する。
 そのため、外国人都民会議等の発言のためのフォーラムなどを推進する。
  ウ 企業等の自主的な取組への支援
 生活都市であるとともに、ビジネス都市でもある東京に人権理念を浸透させるため、企業等の自主的な取組を支援する施策を展開する。
 そのため、人権関連ビジネス機構(人権問題に取り組む企業等の連合的な組織)の設立誘導や業態ごとの人権ガイドラインの策定支援の研究などを推進する。
  エ 人権施策への民間活力の導入
 効率的かつ効果的に人権理念を実現し、多様で柔軟な人権施策を都民に提供するため、人権施策への民間活力の導入にかかわる施策を展開する。
 そのため、人権標準ガイドライン(プライバシー保護ガイドライン等)の研究などの人権ビジネス事業化の基盤づくりや、民間の技術力や経営力、資金力などの積極的な活用を図る。

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第5章 指針の推進

 第1節 多様な主体の参画による推進

 1 都民、NPO、企業等の参画による推進
 都民やNPO、企業などの人権施策への参画を推進する。そのため、東京都は、情報公開や広報活動を積極的に行うとともに、都民等との情報の交流と共有を図るための拠点の整備を行う。
 さまざまな人的ネットワークやNPO、企業などの組織やグループなどを活用した、多様で多角的な社会参画を通じて人権施策を展開し、社会の連帯の力で、都市社会のセーフティネットとしての人権施策を支えていく。
 また、人権施策を効果的かつ効率的に実現する観点から、民間と行政との新しい役割分担を確立する。NPO等の活用を積極的に図り、社会に貢献しようとする個人と行政による新しい公共の仕組みをつくる。

 2 複数の事業を有機的・総合的に推進する仕組みづくり
 共通の理念や目的、テーマを掲げ、都民、NPO、企業など多様な主体の参画を得て、広範囲から知恵と力を集めて、複数の事業を有機的かつ総合的に推進する先導的事業を展開し、人間の存在と尊厳を基軸にした都市づくりの契機とする。

 第2節 東京都の推進体制

 1 庁内の推進体制
 他の行政施策との整合性、連携を図りつつ、個別施策や個別人権の枠組みを超えて、全庁的な人権施策の推進体制を整備する。
 また、限られた行財政資源の有効活用を図りつつ、啓発や研修などの横断的課題や新しい人権課題への対応など、指針を総合的に推進するためのプロジェクト組織を設置する。

 2 財団法人東京都人権啓発センター
 財団法人東京都人権啓発センターは、人権啓発を推進する公益法人であり、東京都、区市町村、NPO等の各実施主体の連携協力を側面から支援し、中立性・公正性を確保しつつ、積極的かつ効果的な啓発活動を推進していくことが期待されている。
 今後、人権啓発施策を効果的に展開するためには、人権情報の発信機能、人権諸機関やNPO等との交流機能の強化が必要である。

 第3節 施策の評価と見直し

 1 施策の再点検
 東京都で行っているさまざまな人権施策を改めて見直し、取捨選択の上、発展させていく。人権施策を実効あるものとするため、従来からの施策についても、人権を取り巻く社会経済環境の変化を踏まえて、その効果等に関する評価・検討を行う。この施策の再点検を活用して、施策の一層の充実を図っていく。

 2 施策指標の開発
 施策の目標と実績を都民にわかりやすく示すため、施策の達成度を検証・評価する施策指標を研究・開発する。
 特に、人権施策は個人に着目して行われるものであり、施策評価においては、都民ニーズの満足度を重要なポイントとする。

 第4節 国及び自治体との連携

 1 区市町村との連携
 地方自治を確立し、分権を推進する立場から東京都及び区市町村は、適切に役割分担し、情報を共有しつつ、連携を図っていく。
 また、都民の生活圏域拡大への対応と行政サービスの効率化を目指して、区市町村相互の連携の促進を支援する。

 2 国及び近隣県市との連携
 人権問題は行政区域を越えて発生する場合がある。そのため、都県境を越えて東京圏全体の広域的な対応が求められる人権問題については、国及び近隣県市と協力し、あるいは、国に対して制度、財政面での適切な取組を求めることにより、施策を推進する必要がある。
 また、効果的な人権啓発活動を行うため、国及び近隣県市と連携した広域的な体制を強化していく。

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