足跡とスコップの新証拠などを提出
有罪の根拠とした鑑定の誤りを明らかに


 狭山弁護団は20年12月に3次元スキャナによる計測にもとづいた足跡新鑑定など13点の新証拠と再審請求補充書を提出した。第3次再審以降、提出された新証拠は241点となった。

 今回提出された13点の新証拠のうち、足跡とスコップについての新証拠を紹介する。 足跡新鑑定は、3次元スキャナを用いこれらの立体形状を計測し有罪の根拠となった事件当時の足跡鑑定(関・岸田鑑定)を検証。(左から、対照足跡・押収地下足袋・現場足跡)

足跡新鑑定を提出

 20年12月8日に、鈴木宏正・東京大学教授、山口泰・東京大学教授、大竹豊・東京大学准教授、長井超慧・東京都立大学准教授による足跡新鑑定を提出した。

 この足跡新鑑定は、現場足跡の石こう型、押収地下足袋で作成された対照足跡の石こう型等を、3次元スキャナで立体形状を計測し、そのデータにもとづいて、有罪の根拠となった事件当時の足跡鑑定(関根・岸田鑑定)を検証したもの。

 関根・岸田鑑定は、現場足跡と対照足跡について、地下足袋のゴム底のはがれ(破損)が石こう型に印象されている「破損痕」が両方に見られるとして、足跡の平面写真上に点を記入、長さや角度を測って符合するとしている。

 足跡新鑑定では、関根・岸田鑑定が平面写真上に記入した点を3次元スキャナで計測した立体形状に対応させ、両社のズレを明らかにしている。平面写真上で計測し、長さや角度が一致するとして現場足跡と対照足跡の特徴が符合するとした関根・岸田鑑定の結論が誤っていることが明らかになった。

 また、足跡新鑑定は3次元スキャナによる計測によって現場足跡と対照足跡の重ね合わせをおこない、「『破損痕』とされた部分の3次元形状(立体形状)には大きな差異があり、符合するとは言えない」と指摘している。

 足跡新鑑定によって、現場足跡は石川さん宅の地下足袋によるものとして有罪の根拠にした寺尾判決の誤りが明らかとなった。

平岡鑑定人はスコップ付着の土と死体発見現場そのものの土を比較しなければ意味がないと指摘している。(写真は星野鑑定より)

平岡第3意見書と証拠開示勧告申立書を提出

 20年12月16日にはスコップについて、検察官の意見書の誤りを明らかにした平岡第3意見書を補充書とともに提出した。

 寺尾判決は、死体発見現場近くで発見されたスコップが死体を埋めるのに使われたもので、石川さんが以前働いていた養豚場のものを盗んで使ったと認定し、有罪の根拠とした。スコップが死体を埋めるために使われたとする根拠となったのが、星野鑑定(スコップ付着の土と比較する対照資料として死体発見現場付近の穴から採取した黒土を類似性が高いとした)だった。

 平岡鑑定人は18年7月に提出した第1意見書から、「対照資料として死体発見現場そのものの土と比較しなければ意味がない」ことを指摘していた。

 平岡第3意見書では、さらに調査分析をすすめ、死体発見現場付近は地形の形成過程から非常に複雑な水石の様相をしており、対照資料の土を採取した穴が死体発見現場の近距離であったとしても、土の水石状況がまったく異なる可能性が高いことを指摘しており、星野鑑定の誤りは明らかだ。

 また、弁護団は、なぜ死体発見現場そのものから土を採取しなかったのかなどの鑑定経過を明らかにする必要があるとして、星野鑑定がスコップ付着の土と比較する対照資料として死体発見現場付近から土壌を採取した際の捜査報告書類、採取記録(穴などの写真、ネガ、スケッチ等)や採取現場を指示した書類などの証拠開示を求める証拠開示勧告申立書も提出した。

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