石川さんが筆跡や指紋などで 脅迫状を書いていないことを証明


実験で石川さんが筆記している状況 斉藤指紋鑑定

 2018年12月20日、狭山弁護団は福江潔也・東海大学教授による意見書(検察側意見書に対する反論所見・福江意見書)、元栃木県警鑑識課員の齋藤保・指紋鑑定士の指紋鑑定(「封筒および脅迫状の指紋検出実験鑑定」)、流王英樹・土地家屋調査士による調査報告書(流王報告書)を提出しました。これによって石川さんが脅迫状を書いていないこと、死体運搬の現場状況から自白の矛盾などが証明されました。第3次再審請求で提出された新証拠は220点になりました。




1 福江意見書

 今回提出された福江意見書は、2018年1月に弁護団が提出した福江報告書(コンピュータによる筆者異同識別鑑定)2通に対して検察側が提出した反証意見書に福江鑑定人が反論したもので、福江意見書では、検察側意見書が「問題がある」としてあげる点については長年の研究の過程ですべて検討・検証済みであると指摘しています。

 検察側意見書の内容は、コンピュータによる筆跡鑑定の手法について「問題がある」などと論難し、「福江報告書の手法によって筆者が同一か否かを判断することは適切ではない」とするもので、福江鑑定が「い、た、て、と」の4文字だけしか検査していないとして、それ以外の文字から指摘される点を見逃す危険性があり、問題があるとしています。しかし、問題があるとする点を具体的に指摘しておらず、ただ「問題である」と言っているだけで科学的・技術的に「正確な意見」ではないと福江意見書は批判しています。

 福江意見書の「コンピュータによる筆者異同識別」の手法は、2005年に日本法科学技術学会で発表されて以来、追試可能な実験によって科学的根拠があることが示されているほか、多くの専門家によって吟味されており、「科学的原理が理論的にも正確性を有し、具体的な実施の方法も、その技術を取得したものにより、科学的に信頼される方法で行なわれた」(2000年7月17日最高裁判決)鑑定であり、このことからも、福江報告書の結論は揺るぐことはなく、石川さんは脅迫状を書いた犯人ではないことは明らかです。

2齋藤指紋鑑定

 狭山事件の真犯人が残した唯一の物証である脅迫状と封筒からは被害者の兄と届けられた警察官の指紋しか検出されておらず、石川さんの指紋は1つも検出されていません。

 齋藤指紋鑑定は、指紋検出実験にもとづいて、脅迫状と封筒を作成し、被害者の家に届けた人物は石川さんではないことを明らかにしたものです。鑑定実験では、石川さんと20代、30代の被験者2人が、自白内容と有罪判決の認定にもとづいて、脅迫状と封筒の作成および訂正を行ない、事件当時に埼玉県警鑑識課員が行なった同じ方法で指紋検出をした場合、脅迫状と封筒の作成、訂正場面のいずれも多数の指の痕跡(指痕)や合致指紋が確認され、石川さん本人では、指痕139個、合致指紋6個が検出されることを客観的に確認しました。

 齋藤指紋鑑定は、実験結果をふまえて、石川さんの指紋が少なくとも1個以上は検出されるはずであり、指紋が検出されなかったことは石川さんが脅迫状にも封筒にも触れていないことを示すと結論づけています。

 脅迫状を書いて届けたのは石川さんではないことを明らかにしたことで、脅迫状を有罪判決の主軸とした寺尾判決は完全に崩壊しています。

3流王報告書(死体運搬)

 流王報告書は、証拠開示された事件当時の航空写真にもとづいて、死体運搬経路について調査・分析したものです。石川さんの自白では、殺害現場の雑木林内から死体発見現場近くの芋穴まで死体を前にかかげて200メートルの距離を運んだことになっています。

 流王報告書では、開示された事件当時の航空写真に死体運搬経路を示したうえで、その死体運搬経路上には、幅が45センチ程度しかない狭い箇所が約40メートル、さらにその区間には、より狭い箇所があることなども指摘し、自白のように死体を前にかかげて運ぶことは著しく困難であると結論づけており、石川さんの自白はウソの自白であり、石川さんが犯人ではないことを明らかにしています。

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