狭山弁護団は1月15日、福江潔也・東海大学情報工学部教授による科学的筆跡鑑定を東京高裁に提出した。
この鑑定は、東海大学の福江潔也・教授の2通の報告書にまとめられたもの。この鑑定では筆跡の特徴を把握するために鑑定対象の文書で繰り返し使われている文字を選び、その画像をコンピュータで読み込み、傾きや大きさをそろえます。読み込んだ画像の文字の上に点を配置しX軸とY軸の座標で表し、文字の形を数値化します。 その数値を比較して、文字の形がどの程度異なっているのかを明らかにしています。
筆跡鑑定の鑑定対象は、脅迫状と石川さんの上申書(63年5月21日、5月23日)、また、脅迫状と石川さんの手紙(63年9月6日、10月26日)について、ひらがなの「い」「た」「て」「と」の4文字をコンピュータで情報処理して筆跡のズレを数値化した結果、同じ人物ではありえないほど数値が上図個人間変動分布のように真犯人と石川さんの筆跡のずれは大きかった。
福江教授は、同じ人物が書いた場合、個人内変動分布のように数値のずれは一定の幅に収まるが、ほかの人物が書くと明らかにずれが大きくなると言う。上図では同じ筆跡の特徴の接合部分が0・1%しかなく、両者が別人の可能性は99・9%であるという鑑定結果を科学的に証明した。
同日の記者会見で石川さんは「読み書きができない石川一雄が、脅迫状を書いたこと自体が元々、おかしかったと言われていたから当然の結果だと思っている」と話した。福江教授は、従来の筆跡鑑定は見た目で文字の特徴を比較する手法などが中心だったが、「今回はコンピュータが客観的に判断した事が最大の違いだ。ずれの数値から別人が書いたと考えなければ不合理だ」と鑑定の客観性と脅迫状は石川さんが書いたものではないことを強調された。