5月11日、狭山弁護団は、石川さんの自白には信用性も任意性もないことを明らかにした2通の補充書を東京高裁に提出した。
提出された補充書の1通は、公判での自白に関して、石川さんが1審の裁判中も取り調べ段階の自白内容を維持していたのは、否認できない状況に追い込まれ、諦めの心境と弁護人との信頼関係の喪失、警察官の「面倒見」等の複合的要因によるもので信用できるものではないことを取調べ録音テープなどをもとに明らかにしたもの。もう1通は、取調べ録音テープでは、否認を続ける石川さんに対して三人の警察官が脅迫状を書いたという自白を強要している取り調べが録音されており、自白はとうてい任意になされたものとは言えないことを指摘している。
録音テープのやりとりからは、脅迫状とともに封筒に同封されていた被害者の身分証明書について、石川さんはまったく説明できていないことを指摘し、関係者の調書、捜査報告書などの新証拠4点をもとに、被害者の手帳を奪い、脅迫状が入った封筒に身分証明書を入れて被害者の家に届けたとする裁判での認定に対して合理的疑いが生じていることを明らかにした。有罪証拠とされた腕時計についても、録音テープでのやりとりでは「わからない」をくりかえし、自白内容が不自然であること、殺害後に路上に捨てたという捜査段階の自白も公判での自白も信用性がないことを明らかにした。
そして5月14日におこなわれた第36回三者協議では、弁護団は自白についての補充書に関しての説明をおこない、準備中の新証拠を順次提出していくことを伝えた。検察官は、福江報告書(脅迫状は99.9%石川さんが書いたものではないと結論づけたコンピュータによる筆跡鑑定)への反論・反証を検討中であること、自白の関係についても反論を検討するとの姿勢を示した。
確定判決事由に合理的・明確な疑いが生じているならば再審を開始するのは当たり前のことである。一日も早く再審開始決定・無罪判決を勝ち取るために、各地・職場での最大限の取り組みを進めよう。