「万年筆は被害者のものではない」

下山鑑定を提出
第29回3者協議が開かれる


 8月29日、狭山事件の第29回三者協議が開かれた。前回の三者協議で、植村裁判長が検察官に説明するよう求めていた捜査段階で集められた証拠物の保管について、検察官は8月19日付けで意見書を提出し、弁護団が開示を求める埼玉県警などの証拠物一覧表は、昨年開示した東京高検の領置票と同じものであり、これが現時点で捜査機関が保管する証拠物のすべてである、と回答。また、財布、手帳関係の証拠開示についても、必要性がないとする不誠実な回答を繰り返した。弁護団は、7月19日付けで、上申書作成経過、犯行動機や自白の変遷、自白にいたる経過に関わる捜査資料などの証拠開示勧告申立書、万年筆に関わる証拠開示勧告申立書を提出していたが、これらの要請に対して検察官は、検討中との回答。弁護団は引き続き裁判長からの証拠開示勧告、検察が抵抗している重要証拠の開示を求めていく方針である。
 第29回三者協議に先立つ8月22日、弁護団は、下山進博士(デンマテリアル㈱色材研究所在籍・前吉備国際大学副学長)による鑑定書を提出した。この下山鑑定は、狭山事件の確定有罪判決(東京高裁・寺尾判決)が自白にもとづいて被害者の所持品が発見されたとして有罪の決め手とした万年筆が偽物であることを明らかにした極めて重要な鑑定である。確定判決では、被害者の所持品であるカバン、万年筆、腕時計が、石川さんの自白通りに発見されたとして、これを「秘密の暴露」(犯人しか知らないことが自白によって判明した)と認定し、石川さんを犯人とする決定的証拠とした。特に、万年筆は石川さんの家から発見されたという意味で有罪の重要証拠とされた。下山鑑定は、被害者が使っていたインキが、従来、その色からライトブルーと呼ばれてきたが、当時販売されていた「ジェットブルー」という商品名のインキであることを明らかにした上で、発見万年筆に被害者が事件当日まで使っていたジェットブルーインキが入っていなかった、すなわち被害者のものではないことを科学的に明らかにした画期的な新証拠である。万年筆は発見経過も証拠物としても疑問だらけの「証拠物」であり、その上に、今回の下山鑑定が提出された意義は極めて大きい。石川さんの無実が次々と明らかにされている。あと一押し、さらに世論を大きくし、狭山を動かそう。