ユーチューブで土地差別調査を煽る動画が流されていることが今年の1月22日発覚した。ユーチューブ動画のタイトルは「不動産会社のタブー 同和地区(被差別部落)と不動産会社」で「宅建太郎」の名で公開されている。公開日は1月14日。3月28日現在で18万7千回視聴されている。わずか2か月半で急速に拡散されている。
動画では、不動産業界では、物件を査定するために、そこが被差別部落かどうかわかっていなければならないとし、目安となる調査方法を明示しそれが必要だと促している。そして実際に台東区内の部落を暴いている。土地差別調査と低い査定を誘発・助長する差別煽動動画である。
土地差別調査は、部落内の物件は購入しないという差別意識の表れであるが、それによって部落の不動産は、売れない、売れても不当に安いという事態を生み、被差別部落の生活を悪化させることにつながる。
また、今日、そこが部落かどうか調査も教示もしてはならないという宅地建物取引業の社会的責務を定めた国土交通省や東京都の方針とも逆行する。「宅建太郎」はこの社会的責務を知りながら差別動画を公表しており挑戦的で悪質である。
都連は、第1に、この動画に対して「違反報告」をユーチューブにあげるよう広く呼びかけた。第2に、東京法務局、東京都、台東区に報告し削除に向けた取り組みを要請した。第3に、中央本部を通じてユーチューブ(グーグル合同会社)に対しても削除を要請していく方向である。
東京都人権部と都市整備局が東京法務局に削除要請
東京都人権部および都市整備局は、動画の放置は不動産取引に起因する差別を助長するおそれがあり、また、国、都による業界への啓発の取り組みや業界団体による人権意識向上への努力を阻害するとして、東京法務局に削除要請した。また、国土交通省に報告した。さらに、不動産業界に対して「社会的責務に関する意識向上」について注意喚起をおこなった。不動産業界では全日本不動産協会都本部等のホームページを通じて都からの通知を紹介し「同和地区の存在を調べること、答えること、教えることが差別あるいは差別につながる行為であること」を改めて会員に徹底した。
法務省人権擁護局は、2018年12月27日付けで「インターネット上の同和地区に関する識別情報の摘示事案の立件及び処理について」各法務局に依命通知を発している。その通知では「同和地区に関する識別情報の摘示は、目的の如何を問わず、それ自体が人権侵害のおそれが高い、すなわち違法性のあるもの」とし、「削除要請等の措置の対象とすべき」と述べている。
「部落探訪」(ユーチューブ版含む)はもちろんのこと土地差別調査を煽る本動画も即刻削除されるべきである。
また、再発防止にむけ、不動産業界に対する「意識調査」を実施し業界の社会的責務に関する認識度合いを把握するとともに、大阪府のように「宅地建物取引業者及び宅地建物取引士の指導及び監督処分基準」で「取引の対象となる物件が同和地区に所在するか否かについて調査すること又は取引関係者に教示すること」を明確に禁止し知事の指導事項として取り扱うべきである。