エスカレートする「示現舎」の差別煽動
モニタリング事業の実施を



エスカレートする示現舎

 「鳥取ループ」「示現舎」(以下「示現舎」)の部落差別煽動はエスカレートしている。

 「示現舎」は、第1に、「全国部落調査」復刻版を出版し、インターネットで全国の5367の被差別部落の所在地等を公表している。第2に、部落解放同盟関係人物一覧と称し、少なくとも裁判の原告248人以上の個人情報を暴露している。そして、第3に、部落を歩いてそのレポート記事を写真入りでネット公開する「部落探訪」を2015年11月から開始し、全国110以上の部落を暴露している。また、2018年11月から「部落探訪」動画版をユーチューブで公開し始めた。3月7日現在で16の動画をアップしている。被差別部落の所在地リストから、写真入りの探訪記事へ、そして、動画へとよりリアルに被差別部落を暴く方向へと「示現舎」の差別煽動は悪質化している。都内では、「復刻版」20か所、「部落探訪」11か所、「ユーチューブ動画」2か所が暴かれ晒されているのが現状である。

法律で処罰すべき犯罪である


 「示現舎」による一連の差別煽動行為の特徴は、第1に、被差別部落の所在地や個人情報を暴き、部落や部落解放運動に対するマイナスイメージを煽り、身元調査などを誘発・助長する差別煽動であり、「人種差別撤廃条約」の言葉で言えば「法律で処罰すべき犯罪」にあたること。

 第2に、部落差別解消推進シリーズ(ユーチューブ)、差別をなくそう・部落探訪等と一見「反差別的立場」をとっていると見せかけるサイト名は、これまでの出版停止、ネット公表停止を決定した横浜地裁などの仮処分決定、東京法務局の説示に対して挑戦的であり、部落差別解消推進法の理念に反することはいうまでもないこと。

 第3に、このような差別煽動の中で、都内で暮らす被差別部落出身者は差別の現実のもとで不安と恐怖の生活を余儀なくされていること。取り返しのつかない事態になる可能性もあり、許すことのできない「差別犯罪」である。

 第4に、一連の強まる差別煽動は、ほぼ2016年から開始しすでに3年以上放置されている。この放置を許す日本の法体系が問われなければならない。この事件等を背景に2016年12月「部落差別解消推進法」が成立・施行されたが、削除されるまでには至っておらず、「法」を具体化しネット上の差別に対する実効性のある法制度の確立が急務となっている。

差別主義的行為を社会的に孤立させる運動の強化を


 このような犯罪的差別を許さない闘いとして、第1に、「全国部落調査」復刻版、部落解放同盟関係人物一覧の削除と損害賠償を求めた裁判闘争に勝利することである。2016年4月19日に東京地裁に提訴し、いよいよ年内にも結審が予想される中、裁判傍聴行動含め差別主義行為を社会的に孤立させる闘いを強めていかなければならない。

 第2に、ユーチューブ動画については、「低評価」「違反報告」の取り組みを社会的に拡大していく取り組みやユーチューブ(事業運営者)に対する削除とアカウント停止要請の取り組みなどを実施してきた。しかし、グーグルやユーチューブが私たちの報告や要請をどう受け止めているのか不明な点も多く、今後も取り組みを強めていく必要がある。

 第3に、「部落探訪」については、関係するすべての都区市町村から東京法務局等へ削除要請の取り組みがされた。法務省、東京法務局は人権侵犯事件として取り上げ、早急に削除に向けた対策を講じるべきである。

 第4に、差別の拡散防止と被害者救済に向けた法制度確立が重要である。①「人権侵犯処理規定」にもとづく法務省の対応はいうまでもなく、②「プロバイダ責任制限法」の改正、③ドイツの「ソーシャルメディア法」ようなプロバイダやSNS事業者の責任法。④「法律で処罰すべき犯罪」規定を含む差別禁止・人権侵害救済法の制定等が必要である。そして、当面、全国的に広がりを見せている都区市町村による拡散防止・救済措置となる「モニタリング事業」の創設が重要である。

 第5に、技術的に遮断する対策(ブロッキング等)の確立や差別サイトに「広告」を出さない措置(企業に対する取り組み)等も必要になっている。

 第6に、インターネット上に差別情報が氾濫する中、反差別・人権情報の発信力を強めていかなければならないことはいうまでもない。

モニタリング事業の早急な実施を

 「モニタリング事業」は、①行政(都区市町)自らがネット上の差別を見つけ出し、(ネットパトロール、実態把握機能)、②行政がプロバイダやSNS事業者に削除要請する。(削除は実質的な拡散防止・救済措置となる)、③案件によっては東京法務局に削除要請する。④差別実態の把握、削除依頼、実際に削除された件数など報告書を作成し、差別事件をなくすための政策立案に活用する。(法律制定要求等)、⑤通報、相談窓口を設け補完する、といった機能があり、現在の法制度状況の中で効果的な対策である。

 東京都は「モニタリング事業」について、「他県の実施状況調査や有識者の意見を聞きつつ検討中」という回答をしている。東京都および区市町村は連携しながら、「部落差別解消推進法」や「東京都人権条例」の具体化として、ネット上の差別の拡散防止に向け、早急に「モニタリング事業」の実施に踏み切ることが、差別の現実から求められている。