岩崎行政書士戸籍謄本等不正取得事件
不正取得の実態解明を



 栃木県行政書士会所属の岩崎行政書士による戸籍謄本等不正取得事件が、昨年の8月6日付けの新聞報道で発覚した。岩崎行政書士は昨年9月4日略式起訴により罰金刑に処された。また、9月22日栃木県行政書士会は「2年間の権利停止および廃業の勧告」という内容の処分を公表した。

 戸籍謄本等不正取得事件とは、プライバシー保護や差別の撤廃という流れの中で現行戸籍法では原則第3者の戸籍等が取得できないもとで、探偵社等は依頼者の依頼を受け、職務上ならば第3者の戸籍等が取得できる行政書士や司法書士など8士業と結託し、第3者の戸籍等を不正に取得する事件である。

 2011年に発覚し職務上請求書を偽造したプライム事件の首謀者(探偵社)は、調査依頼のほとんどが浮気調査か結婚の身元調査だと裁判で証言した。結婚の身元調査では「部落かどうか調べる」差別身元調査も含まれている。今回の岩崎行政書士による不正取得事件もその可能性があり、部落解放同盟中央本部は10月9日、各都府県連合会に「不正請求の実態解明」等について通知した。

 都連では、区市町村に情報開示請求などをおこない、2017年以降、都内31区市町村で241通の戸籍等の職務上請求書が提出されていることが分かった。しかし、241通の中で何通が不正請求かは判明していない。それゆえ、都内12区で導入している不正に戸籍等が取られた場合にとられた本人にその旨を通知する本人通知制度が執行されないでいる。これは被害者救済の道を閉ざすことになる。

「日行連」と話し合い

 中央本部は日本行政書士会連合会と1月31日話し合いを持った。中央本部と埼玉、栃木、東京の関東3都県連が参加した。

 日本行政書士会連合会は事件について次のように報告した。①岩崎行政書士が使用した職務上請求書の控え2500枚保管してあるが、不正取得の全体解明は難しい。②業務内容(職務上請求の理由)で不自然と思うところはある。また、帳簿の管理もできていないという問題もある。③さらに、警察情報では、探偵からの振り込み(入金)があり、報酬は計9000万らしい(1通2万~4万円)。④栃木県行政書士会では「不自然な業務内容」や「普通ならあり得ない大量の職務上請求書の使用」についてチェックしていなかった。このような日本行政書士会連合会の報告を受け、解放同盟からは2500枚を区市町村別に報告してほしい、岩崎行政書士本人含めて再調査してほしいなど全体的な不正取得の実態解明に向けた協力を依頼した。

 今後は、被害者救済と再発防止にむけ、不正実態を詳細に明らかにする取り組みを強めるとともに、事件になった場合のみ本人通知する被害告知型本人通知制度を改善させることも大きな課題だ。