差別されない権利を認め差し止め範囲を拡大
「復刻版」裁判控訴審判決



「全国部落調査」復刻版出版事件裁判の控訴審判決

 「全国部落調査」復刻版出版事件裁判の控訴審判決が6月28日、東京高裁でだされた。

 東京高裁控訴審判決は、①一審東京地裁判決と同様に「全国部落調査」復刻版の差し止めと損害賠償を認める判断を維持し、②差し止めの範囲を一審判決の25都府県から31都府県に拡大した。③更に、一審では認めなかった「差別されない権利の侵害」を認めた。④そして賠償総額も一審の約489万円から約550万円に増額した。

 原告団・弁護団は、「差別されない権利」を人格権の内容として認め、差し止めの範囲を拡大し、損害賠償額を増額した東京高裁の判断を高く評価した。

 特に「差別されない権利」について、憲法13条、14条の趣旨等に鑑みると、「人は誰しも、不当な差別を受けることなく、人間としての尊厳を保ちつつ平穏な生活を送ることができる人格的な利益を有するのであって、これは法的に保護された利益である」「部落差別は本件地域の出身等であるという理由だけで不当な扱い(差別)を受けるものであるから、これが上記の人格的な利益を侵害するものであることは明らかである」と明確に認めた判決となった。

 しかし高裁判決は、「差別されない権利」を認めながら全国41都府県全ての差し止めを認めなかった。とはいえ、残る10都府県に原告が存在しないという理由で差し止めを認めなかったのであり、被差別部落の地名リストの発行はいかなる地域を対象とするものであっても違法であることにかわりはない。

 原告団・弁護団は、41都府県全ての差し止めを認めなかった点などは不服であり、今後精査し上告する予定であるとした。