「全国部落調査」事件等を課題に
2017年度解放セミナー


2017年度解放セミナー

 2017年度解放セミナーが3月10日、東京都人権プラザ分館でひらかれた。セミナーは(公社)東京部落解放研究所と都連の共催で、55人の参加があった。

 主催者挨拶を長谷川三郎理事長が行ない、人権プラザ分館廃館の問題などとの同和行政の後退や部落差別解消推進法活用の意義について語られた。セミナーでは、部落問題の歴史と現代を学ぶ2つの講演が行なわれた。

 講演①では、『「全国部落調査」復刻版問題を取材して』と題し、朝日新聞編集委員の北野隆一さんから、マスメディアの立場から見る事件の報告を受けた。事件の経緯から、裁判での原告と被告双方の主張などが説明された。現在、原告が順次提出している陳述書については、裁判官に厳しい差別の実態を訴える重要なものだと述べられた。

 また、「全国部落調査」復刻版問題以外にも現在の人権・差別について幅広く講演いただいた。街頭で公然と行われているヘイトスピーチ。優越思想に基づく差別犯罪が浮き彫りになった相模原障害者施設殺傷事件。日本の右傾化の中で差別が厳しくなっている。

 講演②では『福島の部落史』を東日本部落解放研究所会員の横山陽子さんから、地域を超えたダイナミックな動きがある東北・福島の部落史の講演をいただいた。

 福島県の地理と歴史については、領主のありかた、その変遷に伴い複雑な支配形態が影響し、同じ東北でも領主支配が一様でない事が述べられた。また、移住地・役・生業・縁組・地域呼称については、弾左衛門配下の関東との共通点、相違点についても述べられた。

 閉会挨拶を松浦利貞(公社)東京部落解放研究所副理事長が行ない、人権の世紀になると信じた21世紀だったが、差別が深刻化している現状に懸念を示し、今後も部落差別撤廃へ共に取り組みを進めようと呼びかけた。