コロナ禍で困窮状態にある移民への支援として、移住連では、なんみんフォーラムと協力して立ち上げた「移民・難民緊急支援基金」と、移住連貧困対策プロジェクトとして参加している反貧困ネットワークの「緊急ささえあい基金」による現金給付を行ってきた。この二つの基金の支援対象者には重なりもあるが、5月以降あわせて延べ2000人以上を支援してきた。以下では、そこからみえてきたコロナ禍の移民の実態について紹介したい。
移民たちの実態 (1)—仮放免者/非正規滞在者
仮放免者とは、有効な在留資格がなく、入国管理施設(収容所)に収容されたものの一時的に解放されている者をいう。家族がいるなど日本に生活基盤があったり、難民申請中をはじめ帰国できない人がほとんどである。
収容所の感染リスクが考慮され、4月以降、入管が仮放免を認めるケースが相次いだ。しかし仮放免後は原則、就労が禁止され、また住民登録もできないため公的な福祉制度は利用できない。そのため仮放免者は、周囲の人びとや支援団体に頼って生活をすることになる。だが、コロナ禍のなかで、家族やコミュニティのメンバーも失業したり、教会もミサがなくなり献金が集まらないなど、彼らの生活を支える側も苦境に陥るようになった。こうしてもともと過酷な生活を送ってきた仮放免者はより追い込まれるようになった。ガスや電気が止められ、食料もままならない、家賃が払えず追い出しの危機にあっているなどの声が寄せられている。さらに、仮放免者は、数年にのぼる収容生活のなかで、健康状態に問題を抱えている人も多いが、保険がなく医療機関での受診は非常に高額になる。まさに「医・食・住」の危機に直面している。
移民たちの実態 (2)—非正規雇用で働く人びと
ブラジルやペルー出身の南米系労働者は、製造業の現場で非正規雇用で働く割合が高い。彼らの場合、解雇や雇い止めのほか減産により休業を余儀なくされている例が多い。なかには、工場のなかで外国人ばかり先に解雇になったという例もあった。リーマンショックのときも南米系労働者の失業率は非常に高かったが、その状況とほとんど変わっていない。
フィリピン女性をはじめ、歓楽街やホテルの清掃業で働く移民女性も苦境に陥っている。休業補償の手続きをしている職場は非常に限定的であり、結果として無収入になっている人が目立つ。シングルマザー世帯も多く、支援団体からの食料支援や友人らからの借金でしのいでいるのが現状だ。彼女たちの多くは形式的には福祉制度を利用できるが、日々の現金払いで働いていることなどにより書類が整わなかったり、日本語での複雑な申請手続きを独自にすることは難しく、結果として制度にアクセスできていない例も珍しくない。
移民たちの実態 (3)—技能実習生、留学生
技能実習生や留学生からも解雇、休業(による減収もしくは無収入)の訴えが少なくない。くわえて、雇用契約や就学期間が終了し帰国したいものの帰国できず日本に留まっている人たちも数万人いるといわれている。入管は彼らに対し、在留資格の面では柔軟性をみせているものの、仕事を見つけることは難しい。技能実習生や留学生は生活保護も認められていない在留資格のため、数ヶ月にわたり非常に困窮状態におかれている。
さらにこれは、技能実習生や留学生に限らないが、もともと生活がギリギリだったという移民たちが少なくない。そのため一旦収入がなくなったり減ったりすると、すぐに生活に影響が出る傾向にある。
求められる取り組み
以上のように、様々な背景をもつ多くの移民が、コロナ禍のなかで生活困窮に陥っている。しかし福祉制度やコロナ禍の支援には、在留資格の面で制限があり、対象外となっている移民も少なくない。国際的な人の移動がとめられるなか、同じ社会に暮らしているにもかかわらず、連帯の輪から漏れているのである。
しかしこのような移民たちが直面している排除や周縁化は、コロナ禍によるというよりも、彼らがもともと脆弱な位置におかれていたことの帰結である。「誰も取り残さない」というSDGsの宣言を思い起こし、排除のない形で緊急支援を行うと同時に、移民の生活を長期的に支える抜本的な政策が必要である。