フジテレビの情報バラエティ番組、ワイドナショーで2024年6月30日、就職差別解消を推進する東京都の啓発動画を揶揄し、公正採用選考に関する誤った理解を視聴者に与える番組が放映された。
番組では、本籍や出生地など本人に責任のない事項や尊敬する人物など本来自由であるべき事項を面接時などに尋ねることは就職差別に該当すると注意を促した都の啓発動画に、「なんでも差別にするとコミュニケーションがとれない」など疑問の声があるとし、出演者にコメントを求めた。出演者の一人は「東京都がつくってることにびっくりしちゃって、ほんと暇なんだな、バカみたいじゃんこんなの」と就職差別を容認する発言をした。他の出演者もそれを正しく訂正するコメントはなく、出演していた弁護士まで面接時での違反質問を擁護する発言をする始末だった。
しかも、この番組は録画番組であり、番組を企画し、収録し、放映されるまで、スタッフ、出演者の誰もこの発言を問題視することもなく、就職差別撤廃を目的とする「職安法5条の5」(1999年)や「就職差別につながるおそれのある14事項」のことを認識していなかった。フジテレビには、部落問題などの人権問題について正しい理解と認識のもとに、公正な採用選考を推進する役割を持った公正採用選考人権啓発推進員が配置されているにもかかわらず社内全体に共有されていなかった。
東京都は、7月5日付けで「ワイドナショーでの見解に係わる申し入れ」をおこないフジテレビバラエティ制作部に「正確な理解に基づく番組制作」を要請した。
また、部落解放同盟中央本部からも「申し入れと要請」をおこない、3回話し合いを行った。
フジテレビは、企業経営者や求職者を含めた視聴者に間違った認識を伝え就職差別根絶に向けた行政などの努力を水泡に帰してしまいかねない内容であり、フジテレビの「コンプライアンスガイドライン」にも抵触する内容であったと責任を明らかにした。
また、再発防止策として、①バラエティ番組制作を担当する社員全てに部落問題に関する勉強会の実施。②番組チェック体制の確立、③恒常的な社員研修の実施、④正しい理解に基づく企画の放送などをまとめた。
東京都は、1998年の差別身元調査事件をきっかけに、「職安法」が改正され(5条の4を追加:現在5条の5)、今日、法令厳守が強く求められていることを明らかにした啓発動画の作成など就職差別解消に向けた取り組みの強化が必要である。