7年間で差別意識は悪化
東京都が「人権に関する都民の意識調査報告書」を公表


表1 表2

 東京都は2月9日、「人権に関する都民の意識調査報告書」(以下「今回調査」)をホームページで公表した。この調査は2020年12月、「インターネットモニターを対象としたWebアンケート」により都内に在住する18歳以上の男女10000人を対象に実施された。2013年にも「人権に関する世論調査」(以下「2013年調査」)を実施しているが、この7年で人権状況は悪化しており、部落差別意識も強まっている結果が浮き彫りになった。

 「今回調査」では部落問題について2つの設問を設けている。

Q1あなたが、同和地区や同和問題について、はじめて知ったきっかけは何からですか。


 まず認知度についてだが、この設問に「知らない」と回答したものが20・4%なので認知度は79・6%となる。「2013年調査」では80・8%なので1・2ポイント減少しており8年間で認知度の向上が見られない。認知度を年代別で見ると、「18歳・19歳」67・5%、「20代」70・2%、「30代」73%で若い世代の「認知度」は低く、平均以下は30代以下の世代である。

 次に、「はじめて知ったきっかけ」の上位3つは、①「学校の授業」19・1%、②「テレビ、ラジオ、新聞、本など」15%、③「家族」9・9%である。また「はっきり覚えていない」が17・2%いる。年代別では、「60歳以上」を除くすべての年代で「学校の授業」が最も高く、中でも「18歳・19歳」が28%で一番高い。それでも3割も満たないことを問題視すべきである。「2013年調査」との比較では、2013年は「テレビ…」「学校の授業」「家族」という順番だったが、7年間で「学校の授業」に順位が入れ替わった。認知度があまり変化していない中、「学校の授業」で知る機会が増えたというより、「テレビ…」での部落問題の取り扱いが減ったと理解すべきだろう。若い世代の認知度が平均値よりも約10ポイントも低いということは、「学校の授業」での取り扱い回数も減っているのではないだろうか。

 「はじめて知るきっかけ」をあらゆる媒体で作り、認知度をあげていく必要がある。もちろん認知するだけでは不十分であり「正しく認知」することが重要であることはいうまでもない。

Q2仮にあなたが同和地区の人と結婚しようとしたとき、親や親戚から強い反対を受けたら、 あなたはどうしますか。


 表2の通りであるが、差別は悪化している。「自分の意志を貫く」が7年間で6・9ポイント減少し、「絶対に結婚しない」が0・9ポイント増加している。「わからない」も10・4ポイントも増加している。

 「意志を貫く」と「親の説得…」の合計を「結婚するグループ」としても合計46・7%で半分にも満たない。被差別部落の所在地がネットで暴かれているという現在の実態を踏まえれば、重大な事態である。

 年代別で「20代」「30代」という若い世代を見ると、いずれも平均以下で、「結婚するグループ」も平均並みで若い世代は理解が進んでいるとは決していえない状況である。

 認知度が8割だとしても、その認知内容が重要であり、差別は許さないという態度の育成に向けた継続した教育・啓発が必要である。

 「今回調査」の結果は一刻の猶予も許されない事態であることを示しており、今後、部落問題啓発・教育の強化はもちろんだが、インターネット対策、差別身元調査対策など差別による被害の救済・支援策の確立をはじめ、真剣な取り組みが求められる。