東京都「人権に関する意識調査」結果を公表
悪化傾向を止め、人権意識の改善に向け大胆な政策実行を

部落解放同盟東京都連合会書記長 近藤 登志一


表1~4、グラフ

 東京都は、「人権に関する都民の意識調査」を昨年8月に実施し今年の1月に結果を公表しました。この意識調査はインターネットモニターを対象にしたウェブアンケート調査方法で、都内在住満18歳以上の男女5000人を対象に実施されました。

 「性的マイノリティの人権について」「ヘイトスピーチについて」など11項目について調査されていますが、ここでは「同和問題に関して」の項目について紹介します。この項目では「認知度」と「結婚に対する態度」の2点について調査しています。2013年と2020年の同様の調査と比較しながら見ていきたいと思います。

設問①「同和地区や同和問題についてはじめて知ったきっかけは何ですか」

 表1の通り、部落問題をはじめて知ったきっかけの上位3つは、「学校の授業」16・2%、「テレビ、ラジオ、新聞、本等」15%、「家族」9・5%となっています。

 注目すべきは「同和問題を知らない」と回答した人が30・2%もいることです。100%からこの数字を差し引くと「認知度」は69・8%となります。

 年代別で見ると、20代から40代までは「インターネット」が「家族」より多くなり、3番目になっています。インターネットを通じて部落問題を知るケースが増加しつつあることがわかります。インターネットを通じた部落問題啓発が重要になっています。

 また、若くなるほど「認知度」は低くなる傾向があり、20代の認知度が50%を切っています。70歳以上とでは約40ポイントも差があります。あとでも見ますが、「知らない」が「結婚に対する態度」に決して好影響を与えません。やはり「正しく知る」ことが重要です。

 次に過去調査との比較ですが、表2を見ると、全対平均では知るきっかけとして「学校の授業」「テレビ、ラジオ、新聞、本など」「家族」が上位を占めていることは変わりません。但し、先述しましたが、若い世代になるほどインターネットで知る年代が増加してきており将来は全体的にも「インターネット」が上位に入ってくると思われます。

 「認知度」の推移をみると、2013年80・8%、2020年79・6%の比較では、改善はしていませんが大きな変化はありません。しかし、2020年と今回調査を比較すると、たった3年しかたっていないのですが、「認知度」は約10ポイントも低くなっています。3年間でこんなに変化するものでしょうか。コロナ禍で教育、研修、啓発が極端に減った影響なのでしょうか。関連性は分かりませんが、詳細な分析が必要な気がします。

 20代の「認知度」の推移はもっと極端な動きをしており、前回調査から約20ポイントも低くなっています。いずれにしても「正しく知る」を基準にした場合、危機的事態と認識すべきでしょう。

設問②「仮にあなたが同和地区の人と結婚しようとしたとき、親や親戚から強い反対を受けたらどうしますか」

 設問2は、「部落出身者との結婚に対する態度」を示していますが、表3の通り、①+②を「結婚グループ」とすると「結婚グループ」は41・7%。③+④を「非結婚グループ」とすると「非結婚グループ」は13・4%となります。特徴的には、「結婚グループ」が半数いないということであり、「わからない」が45%もいるということです。

 年代別では「結婚グループ」が最も少ないのは30代で36・8%、4割を切っています。「わからない」が最も多いのも30代で49・7%とほぼ半数です。

 また、年代差を見てみると(グラフを参照)、「結婚グループ」の率は、60代が45・7%で最も高く、30代が36・7%で最も低くなっています。その差は、約9ポイント。「わからない」の率は、30代が49・7%で最も高く、70代が39・5%で最も低くなっています。その差は、約10ポイント。「認知度」は、年代が若くなるほど低くなっており、70代が最も高く88・5%。20代が49・8%で最も低くなっています。その差は、約39ポイントもあります。「認知度」に大きな年代差がありながら、「結婚グループ」や「わからない」は「認知度」に比べれば年代差が小さいという特徴があります。

 60代、70代以上は「認知度」は高くても「結婚グループ」の率は低く、「認知」の仕方が問われます。また、20代、30代は、そもそも部落問題の存在を知らない中で「結婚に対する態度」の判断ができず、「結婚グループ」の率が低く「わからない」の率が高くなっているのかもしれません。ここからも「正しく知る」機会を増やすことが重要です。

 将来の社会を見据えた差別意識の分析にあたっては、20代、30代で部落問題を「認知」している人の中で「結婚グループ」はどれくらい占めるかなどもっと詳細な分析が必要です。

 過去の調査との比較では、「結婚グループ」が減少し、「わからない」が増加しているというのが特徴的傾向です。「結婚グループ」は、2013年56・5%、2020年46・7%。「わからない」が、2013年28・1%、2020年38・5%。この項目においても前回調査から3年間で、「結婚グループ」は5ポイント減少、「わからない」は6・3ポイント増加と変化率は大きく、事態は急激に悪化しているといえるでしょう。

「認知度」減少、「結婚グループ」減少、「わからない」増加という悪化傾向

 総じて「認知度」も下がり、「結婚グループ」が減少し、「わからない」が増えているのが現状です。都は、悪化傾向を止め、人権意識が飛躍的に改善していく大胆な政策実行が求められています。