法務省「部落差別の実態に係る調査報告書」から
東京の実態と課題①


図1、図2

 法務省人権擁護局は部落差別解消推進法第6条に基づき、実態調査を実施し2020年6月に調査結果を公表した。法務省人権擁護局のホームページから閲覧できる。

 法務省が実施した調査は、①法務省の人権擁護機関が把握する差別事例の調査、② 地方公共団体(教育委員会を含む)が把握する差別事例の調査、③インターネット上 の部落差別の実態に係る調査、④一般国民に対する意識調査である。

 調査結果では、全国的な集計結果(総計)とともに、東京都区部のデータなども公表されている。従って、東京都区部の実態を中心に3回シリーズで見ていくこととする。

1.部落差別の認知度
~曖昧な認知か、正しい認知か~

 「意識調査」では認知度に関連していくつか質問しているがその中から3つの質問と回答を取り上げて東京都区の認知度を見てみる。

 質問①「部落差別」又は「同和問題」という言葉を聞いたことがあるかという質問に「聞いたことがある」と80・9%(全国77・7%)が回答。

 質問②「聞いたことがある」と答えた人に対して,それがどういう内容のものか知っているかという質問に「知っている」が25・6%(全国27%)、「何となく知っている」が61%(全国59・1%)の回答。

 質問③「知っている」+「何となく知っている」(86・6%、全国86%)と答えた人に対して「部落差別が不当な差別であるのを知っているか」という質問に「不当であることを知っている」と回答したものが89・1%(全国85・8%)。

 図1の通り、この結果を調査総数314人に対しての割合で見てみると、質問②「内容」を「知っている」20・7%、「知っている+何となく知っている」70%、質問③「不当性」を「知っている」は62・4%となる。

 この結果から言えることは、「不当であることを知っている」人は全体の約6割に留まっており、その中には「何となく」という「曖昧な部落問題理解」の人も多くいるという実態があることが分かる。

 また、質問②の「知っている」は総数の21%でしかない。この21%でさえ「正しく知っているかどうか」は分からない。ここから、ある程度の認知度は7~8割だが、「正しく認知している度合」は総数の2割以下であり「正しい認知」を増やしていくことが求められる。

2.部落差別を知ったきっかけ ~学校の授業の重要性~

 次に、先の質問②の「知っている+何となく知っている」人が「部落差別を知ったきっかけ」について以下の通り回答している。

 「学校の授業」37・7%(全国44・4%)「テレビ、ラジオ、新聞、本等」32・3%(全国28%)「家族から聞いた」29・5%(全国34・9%)という順になっている。

 全国的にも「学校の授業」が多い。「正しく知る」ための学校教育の役割の大きさが分かる。また東京の場合は学校の授業と同時にテレビなどマスメディアの影響力も大きく「正しい情報発信」が「正しく知る」ために重要になっている。さらに、「行政の広報誌や冊子」で「知った」の人は6・8%であり、行政が実施する啓発の在り方を根本的に見直す時期にきていることを示している。(つづく)